MCATM

Arrrepentimiento / drawing4-5 / pelepopの主犯。

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  • PITY ある不幸な男

    事故で昏睡状態になってしまった妻を前に、毎日泣くことしか出来ない主人公は、周囲の哀れみを浴びた「不幸な男」として過ごす一方で、この「悲しみ」が自分の本当の感情なのだろうかという疑いを持つ。肉体に感情が伴わないのである。白髪は増えないし、食欲...
  • 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

    「ボンド映画に何を求めていたのか」を、いつも忘れてしまう傾向にある。今回はっきりしたので書いておきたい。それは「格式」である。トム・フォードのスーツに身を包み、アストンマーティンに乗り込むと、007のテーマが鳴り響く。そのカタルシスに身を委...
  • 由宇子の天秤

    「これは、この状況は、まさに天秤だ…」と鑑賞中に思わされたら制作者の勝ち。河原の道を大きく2つに分ける鉄柵の前で、たった一言のナレーションを前に逡巡する主人公を観て、そう感じた。春本雄二郎監督『由宇子の天秤』、英題が「A Balance」。...
  • ドライブ・マイ・カー

    朝焼けを背景に、全裸の女性が断片的な物語を訥々と語る『千夜一夜物語』のようなシーンで映画は幕を開ける。村上春樹による同名短編を原作とした、『ハッピーアワー』『寝ても覚めても』の濱口竜介監督作品。原作を収めた短編集『女のいない男たち』に収録さ...
  • Clairo - Sling

    「Pretty Girl」の頃から、「これは確かに死ぬほどキュートだが、文字通り受け取るわけにはいけないぞ」という磁石の狂った野生の勘のようなものが邪魔をして、あんまり乗れなかったClairo。だけど、「磁石が狂った」っていうのは自己卑下が...
  • シャン・チー/テン・リングスの伝説

    例えこれ以上なく感動的だったとしても、実は後で振り返ってみたらとんでもなく小さな物語で興ざめした…みたいなことが、「親子の物語」に関しては往々にしてある。小さな物語≒パーソナルな物語としてしか描けない世界というものは存在するので、それは必ず...
  • ブリーディング・エッジ

    内容については、俺達の導き手こと佐藤良明さんが詳細に書いてくださっているのでそれを読んでくれ。つうか、原書で読んでいる人は、この丁寧な訳注なしにどうやって読むんだろう…と思ってしまうほどの衒学的な情報量。NYの街並みや暮らしが細かく描かれて...
  • DAU. 退行

    イリヤ・フルジャノスキーによる『DAU』プロジェクトの偏狂ぶりは、『DAU. ナターシャ』のレビューの際に触れた通り。その第二作目となる本作『DAU. 退行』は、上映時間6時間9分という、穏当に言っても「苦行」にカテゴライズされる代物。どう...
  • 女性上位時代

    サントラのジャケの方が馴染み深い初期パゾリーニを支えたフラヴィオ・モゲリーニによる美術や、ガイア・ロマニーニの見事な衣装、そして巨匠アルマンド・トロヴァヨーリによる洒落た音楽。チームの素晴らしい仕事はあれど、意味不明にふらつくカメラ(笑った...
  • ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結

    かつてクリストファー・ノーランが大傑作『ダークナイト』で掲げた漆黒のバトンは、ザック・スナイダーに渡されてなお、黒々と忌まわしく輝く。そんな漆黒のイメージがつきまとう「DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)」にに「色彩」を持ち込もうと...
  • ロバート・エガースの新作に、アニャ・テイラー=ジョイが出るのうれ...

    ロバート・エガースの新作に、アニャ・テイラー=ジョイが出るのうれしいけど、『ノスフェラトゥ』のリメイクっつうのも熱くねえっすか!?https://www.dazeddigital.com/film-tv/article...
    • キング・オブ・コントの会

      キング・オブ・コントを旗印に、ダウンタウン松本人志を筆頭にした堂々たるメンツが一同に介し、新作コントを披露する3時間の特番。失政続きのKOCが果たしたほぼ唯一の意義だったのではないか、と思ってしまうほど、充実した時間だった。願わくば、このメ...
    • R.E.M.の40周年を記念したコンピレーション。オフィシャルリ...

      R.E.M.の40周年を記念したコンピレーション。オフィシャルリリースじゃないけど、本人たち公認みたいですね。自分がカバーするならこの曲、っていうか、俺のフェイヴァリット「Welcome to the Occupation」も入ってるので、...
      • Pasolini

        様々な見解のあるパゾリーニの死について、ここまで直球に解釈して、あまつさえ映画化しようとするのは凄いなと思った。監督がアベル・フェラーラだったのでさもありなんだし、俺の苦手で乗り切れないフェラーラだった。パゾリーニの詩作と、映画化の構想があ...
      • 『AUN』ようやく観た。場を盛り上げる責務を負った人たち(オード...

        『AUN』ようやく観た。場を盛り上げる責務を負った人たち(オードリー)が審査しているのは効果的ではないと思ったのと、それであれば賑やかしのタレントではなくてもうちょい審査員寄りの人を入れた方が良いと思った。手探り感は半端なかったけど、出来合...
        • スワロウテイル

          中国語・日本語・英語がめちゃくちゃに混ざりあったマルチリンガルのチャンポン。流暢な猥談が始まるあたりで、「何故か観ていなかった日本映画」の一本であった本作の評価が決まった。こういうのを観ておかないと映画のパースペクティブが狂うから要注意だな...
        • Olivier Assayas『Noise』、映画それ自体はイマ...

          Olivier Assayas『Noise』、映画それ自体はイマイチだったんだけど、Metricのパフォーマンスが圧倒的に素晴らしかった。初めて聴いたと思ってたんだけど、『スコット・ピルグリム』でブリー・ラーソンが所属していたClash a...
          • 『ホワット・イフ…?』遂に今日から!見るからにトリッキーなことに...

            『ホワット・イフ…?』遂に今日から!見るからにトリッキーなことになりそうなので、実はすごく楽しみ。アニメの大仰なノリに着いていけることを願う。
            • ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン

              一日目。じゃがいもを火にかけると、来客あり。その男性を家に迎え入れた主人公(デルフィーヌ・セイリグ)は、そのまま奥の部屋へ。カメラは固定されたまま一転、日が暮れている。男性は女性に紙幣を渡し、「また来週来るよ」と告げる。居間にある大きな壺に...
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              自宅の前に高速道路が開通したことで、のどかに暮らしていた一家が崩壊する物語。ヨルゴス・ランティモスの語り口並に奇妙で、最終的に訪れるエクストリームな展開には呆気にとられてしまった。イザベル・ユペール、オリヴィエ・グルメ主演、ウルスラ・メイヤ...
            • ゴジラvsコング

              前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(以下、KOM)』における「人間の描けてなさ」に絶望したクチなので、その点、全く期待せずにむすこと一緒に鑑賞。反面、怪獣の描き方に対するモンスターヴァースのこだわりは信頼していたので、過去の名シーンを...
            • ウィッシュ・ドラゴン

              主人公ディンとリナは貧民街に暮らしながら、龍の凧を飛ばしたりしていた幼少頃に「ずっと親友」であることを誓った幼馴染。両方とも学校生活からはみ出ているが故に分かち難い存在となった。しかし、立身出世を志したリナの父が、川向うの山の手への移住を決...
            • オールド・ドッグ

              見るからにしょぼくれた老犬を連れた男が、バイクをノロノロと走らせている。「どうせ犬泥棒に盗まれてしまうから」と、父親が育てた老犬を売り払おうとしている男。ペットブームに湧く中国の富裕層がチベットの純血マスチフ犬を高く買取るので、犬泥棒が横行...
            • ノマドランド

              フロンティアスピリットの極北にある楽観オスカー獲る映画は、大体80点。間違いなく面白いけど、一生大事に思うタイプの宝物のような映画かと問われたら、否と応える、そんな「よく出来た」映画。俺、そろそろわかってきたのよ。今年度のアカデミー作品賞『...
            • SNS 少女たちの10日間

              (c) Caught in the Netオーディションで集められた3名の女優が12歳の少女を偽り、SNSにプロフィールを投稿したら何が起こるかを描いたドキュメンタリー。50代の男が、12歳の女の子に「散歩したり、ココアとか飲ませたりしてあ...
            • ライトハウス

              俺は好きなんだ。前作『ウィッチ』で、ベルイマン的な退廃と寂寞の中に宿る恐怖を描き出してみせたロバート・エガース。バランスが悪く不格好、決して完璧ではないけど、どうしても頭から離れない映画。『ライトハウス』を観てても、やっぱり歪だなあ、と思う...
            • プロミシング・ヤング・ウーマン

              ささやかな世直しを終えた主人公キャシーが、ホットドッグを頬張りながら夜が明けたばかりの空の下を往く。Charli XCXが歌う「I was busy thinking about boys」。歌詞の意味が反転していく中、賑々しくGIF焼けし...
            • マンディンゴ

              ハンサムな白人青年のハモンドは、奴隷農場「ファルコンハースト農園」の若旦那。足を引きずる不具の身であるコンプレックスを抱える彼は、白人社会の慣習と己の良心の間で引き裂かれそうになっている。その葛藤に、甘い結末など用意されてはいない。登場する...
            • 屍人荘の殺人

              「浜辺美波が漫画のように可愛いので、それだけで見る価値があるかな」と全く期待せずに視聴(当然、頭空っぽの面構え)。舞台装置の安さ(よく出来てはいるが、色遣いがゲーセンっぽい)、演出のチグハグさ(さっきのムードはどこへ…?)、音楽の使い方(コ...
            • Tyler, The Creator - CORSO

              今年、これ以上にクールなPV出るかね…。心配。タイラーの新作、この曲を筆頭に、しっかりとアップデートされたサンプルミュージックで高ぶるものがある。デビューの頃から一貫して、自分の容姿いじりの人というイメージでそれはそれで最高だったけど、この...
            • ロード・オブ・カオス

              原作の邦題にもある通り、ブラックメタルの歴史は文字通り「血塗られている」。行為と態度は唾棄すべきものであるのに、誤解を恐れずに書くと、その数々のエピソードと音楽に「魅了されてきた」ことは確かである。「ボーカルの猟銃自殺写真をジャケットに…」...
            • Baghead

              4人の男女が主人公のコメディとして、オフビートな物語の幕は開く。元恋人同士なのだが今も付かず離れずの関係を続けているマットとキャサリン。ファニーフェイスのチャドは、人前でも大きなゲップをしてしまうようなイノセントでキュートなミッシェル(グレ...
            • ワイルド・アット・ハート

              映画としては良い…というか結構好きだが、「果たしてパルム・ドールを獲るほどのものなんだろうか?」。ポン・ジュノ『パラサイト』を観た後みたいに、今回も首を捻った。デヴィッド・リンチ監督による、長編第5作目。『俺たちに明日はない』や『ナチュラル...
            • Jerichow

              アフガニスタンでの戦線から「不名誉な除隊」で帰国したトマスは、雇い主のアリとその妻の三人で、海岸でピクニックをしている。退屈そうな様子を隠さない妻のローラと対象的に、泥酔して踊るご機嫌なアリ。「俺はギリシャ風のダンスを踊っているんだ。お前た...
            • 長谷川白紙 + 諭吉佳作/men + 長久允 - 巣食いのて

              「長谷川白紙と、諭吉佳作/menが共作して、悪いものができるわけがない」という確信=高いハードルをやすやすと越えた楽曲に、ギクシャクとした身体の震えを止められるわけがないわけ。これ、リズムに乗ってるはずなんだけど、自信がない。名曲。監督に長...
            • ファーザー

              イモージェン・プーツが出ると知っていたら、もうちょっとドレスアップして行ったのに。とは言え、アンソニー・ホプキンスのチャームが全開である。大はしゃぎでタップダンスを踊ったかと思ったら、突然すっごく厭なことを吐き捨てる。正しく咀嚼できないタイ...
            • Mr.ノーバディ

              身体が熱くなった。所謂「ナメてた相手が殺人マシーン」ものに名を連ねる、最高に渋いアクション・ヒーロー爆誕ですよ。Mr.ノーバディことハッチ・マンセルを演じるのは、あの「ソウル・グッドマン」ことボブ・オデンカーク。銃とクルマ。ダンスと暴力。ニ...
            • アオラレ

              あの太り方はいよいよPoint of No Return…。でっぷりと太ったラッセル・クロウが、ひたすら母子を追い詰めまくる恐怖映画。ラッセル・クロウ版『激突』かと思ったら、マイケル・ダグラス主演『フォーリング・ダウン』などと近い「イラつき...
            • ツイン・ピークス

              初見は中学生の頃。大狂乱した割にストーリーも何にも覚えてなくて、辛うじて覚えていた要素を指折り挙げてみたら、「ドナ(推し)が突然タバコ咥えて留置場に現れるシーン」「オードリーがゆらゆらと踊るシーン」「ヘザー・グラハム登場」とか、見事に「女の...
            • satomimagae - hanazono

              過去一番アブストラクトじゃないか。RVNG Intl.と幾何学模様のGuruguru Brainからリリースされたsatomimagaeの新作『Hanazono』を聴いて、改めて過去作を聴き返してみたら、やはり一作ごとにその傾向を強めてきて...
            • 彼女のいた日々

              遺品整理業者であるニック(Beastie Boysのアドロック=アダム・ホロヴィッツ)がアシスタントとして雇った、若くて美しいナオミ(『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』エミリー・ブラウニング)は、その周辺の人々の生活の歯車をことごとく狂わせてし...
            • ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて

              「ベストドラクエは?」と聞かれたら、どうしてます?Nintendo Switchで11Sをプレイするまでの私は、「やっぱ3かな。でも、8も同レベルでよく出来てる。4も棄て難いが、AIがしょうもないから…」みたいに歯切れの悪い回答に終始してた...
            • Ham on Rye

              若者たちは「Monty's」というレストランを目指して歩いている。不相応にめかしこんだ彼らが歩くのは、パーティーに参加するのがその目的のようだが、肝心のパーティーの内容は靄がかかったように観客には明らかにされない。そこでは男女の出会いがある...
            • The Pleasure of Being Robbed

              「…アマンダ!…ジャネット!…ジュリー!」 女が、当てずっぽうの名前を連呼している。「…ドーン!」振り返る女性ににこやかに手を振るエレノア。話しかけてきた相手が誰かわからず困惑しているドーンと気さくに世間話をしている間に、バッグを盗む慣れた...
            • 最近観たLGBT絡みで良かった作品

              あまりに醜悪なニュース。これを挙げることで、抗議と変えさせていただきます。特にオチとかもないし、筆者ならではの視点とかもない。時間もないので、ごくごく一部、挙げた。それだけ。強いて言うなら、映画から学べ。詩人の恋『息もできない』のヤン・イク...
            • 怪談

              ジャパニーズ・フォーク・ホラー作品として名高い小林正樹『怪談(Kwaidan)』。抽象度を高めて魔術的なムードを醸し出す書き割りなどのとんでもなく完成度の高い美術(『愛のコリーダ』や『戦メリ』を手掛けた戸田重昌)や、武満徹の雅楽を援用した劇...
            • House of Seven Belles

              『COUCHONS vol.2 - Andy Milligan』で特集されていた「トラッシュホラー界の異端児」アンディ・ミリガン監督作『House of Seven Belles』が、ニコラス・ウィンディング・レフンのbyNWRによって発掘...
            • のだめカンタービレ

              ここにきて、ようやく『のだめ』を全巻読み終えた…。いざ読んでみりゃ、あっという間。以下、軽くネタバレ。だけど、これ、何年前の作品よ…。「のだめ」という天才と、「千秋先輩」という秀才(もしくは、努力型の天才)。「クラシック音楽業界を舞台にした...
            • Digger

              土砂降りの中、流れ込む汚泥に悪戦苦闘する主人公の姿。「ここで暮らすのはキツい…」と誰もが感じてしまうような孤独でハードな生活に、何十年も会っていなかった息子がバイクに乗って突如として割り込んでくる。母親であり、同時に主人公の元妻である女性の...
            • ケン・リュウ『宇宙の春』

              テッド・チャンと並んで、中華系のSFの旗手としてすっかり定着したケン・リュウ。新作短編集(と言っても、過去作で邦訳から漏れていたもの中心だけど)も、相変わらずのキレだった。テッド・チャンより執筆量も旺盛だし、今度『円弧(アーク)』も映画化さ...
            • すばらしき世界

              出所祝いに食べさせてもらったすき焼き。アパートを借りて再出発初日の白飯に落とした生卵。そんな豊かな食事が、乱れる心の中で徐々に荒んでくる。仲野大賀演じる放送作家に説教された苛立ちを、台所で食うカップ麺にぶつける時、その食事の光景は大きな背中...
            • 私は確信する

              「赤の他人の無実を証明する」と覚悟を決めた日、事件の人間関係図を構築しようと一人息子の写真を壁から外す。その行為に、この物語が間接的に描きたいことが象徴されている気がした。実話をベースにした、フランスの映画監督アントワーヌ・ランボーの初長編...
            • クリープ

              「ビデオ撮影してくれる人を募集中。1日につき1000ドルを払います」という求人に応募したアーロンが、雇い主の奇行に振り回されるホラー映画。マーク・デュプラスは完全にコメディの脚本もらって演技してたんじゃないかと思うような怪演。77分とタイト...
            • サムの息子たち:狂気、その先の闇へ

              「サムの息子(Son of Sam)」と呼ばれた連続殺人鬼デヴィッド・バーコウィッツには、共犯者がいた。という説に取り憑かれてしまったモーリー・テリーの話。事件の説明に大半の時間を割いた1話目以降、5分おきに新事実(と新事実…みたいなもの)...
            • クリシャ

              キッチンが廻り続ける限り、少しずつ、少しずつ、彼女は自分の居場所がここに存在しないことを確認させられている。長い空白期間を経て、久しぶりに家族の集いに呼ばれたクリシャは、微妙によそよそしさを漂わせる親戚たちを前に、心改めた自分をアピールしよ...
            • 供述によるとペレイラは…

              新聞社で報道に携わっていながら、世間とは距離を取り続けて生きている一人の平凡な初老男性に訪れる、ささやかかつ決定的な変化。作中では「別のエゴに主導権を握る」と描かれたこの変化は、表面的には英雄的な所業に見えるけれども、そこまで多くもない文字...
            • DAU. ナターシャ

              激しく尊厳を傷つけられた夜の街を、ナターシャは一人歩く。その背後を、獰猛そうな犬を連れた軍人が歩いている。『DAU』がどれだけ気の狂ったプロジェクトかというのは、色んなところで言及されている(Indie Tokyoの記事が一番重厚かつ面白い...
            • 聖なる犯罪者

              ノコギリの軋む不快な音から物語は幕を開ける。主人公を取り巻く不快な「意志」を湛えた空気がそこにある。犬は吠え、雨は身体を打ち付ける。牙を剥く野蛮な現実と、神聖な世界は相対しているようで、彼の信仰は、その相対にこそ立脚しているように思える(告...
            • エマ、愛の罠

              養子の息子が奪われる、という謎の状況から物語はスタートし、「若い母親であるエマがこの子を取り戻そうとする」、という辛うじての骨子は伝わっては来るものの、特に主人公の気持ちが全く伝わってこない作りは、「信頼できない語り手」の存在を想起させる。...
            • ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引書』の映画化をアルモドバルが企画中

              https://www.cinematoday.jp/news/N0114043って、表題の「次回作は初の英語作品に!」より断然ヤバくないっすか?残酷な時の流れをザクッと切り取り、その断面を生々しく見せつけるような彼女の作品は、見方によると...
            • ゼム

              ある悲劇の記憶から逃げるように、心機一転コンプトンに引っ越してくる娘二人の黒人一家。彼女らが直ちに直面する、近隣住人からの差別、職場での差別、学校での差別、とあらゆる角度からの差別と闘ううちに、その家族は、土地とそしてそこに住む人々にまつわ...
            • VIDEOPHOBIA

              モノクロームの映像が醸し出す不穏さ。濃淡に圧縮された視覚情報が、可能な奥行きを綴じ込んでいく。遠くまで見通せているはずなのに手探りのような、「謎」そのものの中でもがく主人公の狂騒が、観ている僕らにも伝播してしまったかのよう。「見る者」と「見...
            • mid90s

              主人公たちのグループには「4th Grade(4年生)」という渾名で呼ばれる「記録者」がいて、彼はいつもビデオテープを回している。彼の手に収まったビデオカメラのRECボタンが押されると、登場人物たちのフィクショナルな記録として、サバービアン...
            • 82年生まれ、キム・ジヨン

              1982年の韓国に女性として生まれたキム・ジヨン氏が、淡々と発狂するという態度で社会に抵抗する姿が描き出される。その結末に至る軌跡を追った物語。「女性であること」で、社会がどのように彼女を追い詰めたのかが、ルポルタージュのような冷徹な目線で...
            • もう終わりにしよう。

              大変困った。話題になっている、Netflixオリジナル作品として配信されたチャーリー・カウフマン監督作を観た。ネットに溢れる数々の秀逸な感想、解説(特に重要なのは、チャーリー・カウフマン自らが疑問に答えた記事)を読む前に、自分の解釈を書き記...
            • 成果

              マンブルコアの代表的な作品と言われている『Funny Ha Ha』(未見。つか、どうやったら観れるの!?)の監督であるアンドリュー・バジャルスキーによる2015年の作品。主人公キャット(Kat)を演じるのは、どこかで観たことあるなーと思った...
            • Maya Hawke - Blush

              「神が二物を、与えてるじゃないか…」的な嘆きはすっかり書き飽きた。今最も「親の顔が見てみたい」女優、Maya Hawkeのアルバム『Blush』。Jesse Harrisプロデュースのどっしりとしたアメリカンフォーク・ミュージックの大王道的...
            • 鉛筆画のテクスチャーで構築されたホラーゲーム『Mundaun』

              スイスのゲームスタジオ「Hidden Fields」が2021年にリリース予定のホラーゲーム『Mundaun』。全編鉛筆で描かれたテクスチャーが圧倒的に異様な雰囲気を放っていて、超気になる。「祖父が謎の火災で亡くなったことを知った主人公が、...
            • マーダー・ミー・モンスター

              南米アルゼンチンはアンデス山脈を望む村で、首のない遺体が発見された。捜査にあたった主人公クルスの不倫相手フランシスカも同じような手口で殺害され、彼女の夫ダビドが逮捕される。女性を狙ったごくありきたりな猟奇殺人ものとして幕を開ける本作は、仄め...
            • 『スコット・ピルグリム vs 邪悪な元カレ軍団』10周年

              『スコピル』が10周年ですってよ!以下の記事で、原作者ブライアン・リー・オマリーや監督のエドガー・ライト、主演のマイケル・セラなどのスタッフ・キャストが当時のことを語っており、死ぬほど長くて全部は読めなかったがめちゃくちゃ面白かった。Sco...
            • キル・リスト

              フォークホラー文脈でかなりの頻度で評判を目にする作品なのに配信すらされていないのだが、DVD購入して観た。仕事するのが厭になって8ヶ月もぶらぶらしてた元軍人の主人公が、相棒に促されて殺しの仕事を再開する…というシノプシスからは全く予期せぬ事...
            • クラスターフェスのこのバンドヤベえな

              このコロナ禍における大マヌケ現象として記録しておきたい「クラスターフェス」。「主張は自由だけど、無邪気に危険なことするのやめてほしい」っていう一般論ぐらいしか感想なかったんですけど、音楽イベント配信してたから念のため確認したら素人音楽好き向...
            • Enter the Groovy World of French Psychedelic Soundtracks

              ヌーベルヴァーグの伝記ものや、ベルトルッチ『ドリーマーズ』などの作品で馴染み深い60年代後半の「5月革命」。政治と芸術がこの上なく接近したこの時代のフランスで流行した、サイケデリックなサントラについてのBandcampの記事。フランスを覆っ...
            • ピーター・エマニュエル・ゴールドマン特別上映

              知らねえ監督というのはまだまだいるもんだな。ピーター・エマニュエル・ゴールドマンとは、ニュー・アメリカン・シネマの代表的な作品『Echoes of Silence』が評価されるが、作品を二本撮ってあっという間に業界を離れたという映画監督。ガ...
            • Stella Donnelly Japan Tour 2019

              「素晴らしかった!」「感動した!」というよりは、ただただ「楽しかった!」と思った、ステラ・ドネリーの来日公演。本国では、インディーズとしては異例の売れ方してると聞いていたので、さぞかし場馴れした感じの人が来るんだろうなと思い、エンターテイン...
            • アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル

              公権力によってフィギュアスケートを奪い取られたトーニャ・ハーディング。ヒールとして世界中から憎まれながらボクシングのリングに上がり、日銭のために殴られる自分が吐いた赤い血を白いマットに残し、彼女はまた立ち上がる。その背後に取り残されたように...
            • WAVES/ウェイブス

              対話の先に希望があり、無理解の先に死が待っている。ケンドリックが、アニマル・コレクティヴが、カニエが、そしてフランク・オーシャンが、燃え盛る炎の下で孤独をより深め、寄せては返す緩やかな波のそばで共感を促す。映画館に響く低音は、深いリバーブに...
            • Return of the Obra Dinn

              面白いゲームは沢山あれど、ここ数年で一番熱中したのは、この『Return of the Obra Dinn』だと思う。瞬間最大風速。妻と二人、10数時間、むすこそっちのけで謎解きに転がりまわった結果、エンディングを経ても残る謎に、議論し続け...
            • Sharhabil Ahmed - The King Of Sudanese Jazz

              寡聞にして全く知らなかったんですが、ファンクやジャズを中心としたアラブ音楽のリイシューレーベルHabibi Funkがリリースした、Sharhabil Ahmed『The King Of Sudanese Jazz』がめちゃくちゃかっこいい...
            • SKIN/スキン

              レイシストである主人公が憎悪の雄叫びをあげる場面から物語は始まる。先日日本でも無料公開された、大変衝撃的な内容の短編『SKIN/スキン』の長編版。内容は全く異なり、登場人物にも直接のリンクはないはずだが、剃髪のシーンや、ソファーを使った遊び...
            • Phoebe Bridgers - Punisher

              なんつうタイトルだ。待望のPhoebe Bridgersの新作は、「心して聞こう」「心して聞こう」と気張りすぎて聴くのが遅くなってしまったけど、前作同様、良いポップアルバムだった。Ryan Adamsは当然プロデュースから外れているので、「...
            • 5lack - 透明少女(feat. Maccho)

              ド本物の風体がある。ずっとS.L.A.C.K〜5lackを追ってたけど、彼がアップデートなのか足踏みなのか、はたまたさまよっているのか、よくわからないままその動きをゆっくりと止めながら、着実に本物のアーティストとしての道を固めつつあるのを感...
            • 2020年上半期 俺デミー賞

              え、もう…?コロナ禍にやられた上半期、マジであっという間だった…。「今年の作品」については、オンラインで観たものも含めて22本。映画館に直接足を運ぶ回数が圧倒的に少なかったですが、それでも異様に良い作品に出会えたので問題ない。『ミッドサマー...
            • No Man’s Sky

              2016年に日本語版が発売され、それ以来あまりプレイしていなかった『No Man’s Sky』を久しぶりに起動してみた。数々のアップデートが繰り返された結果、全く別のゲームになっているという噂がずっと気になっていたから。確かに。実際、全く違...
            • 凱里ブルース

              中国・凱里の町医者として働く詩人のチェンは、元チンピラ。息子をリンチの末に殺されたボスの復讐のために人を殺め、9年の懲役を終えて出所すると、妻は病死していた。種違いの弟とは仲が悪く、育児放棄されているその息子・ウェイウェイを引き取りたいと思...
            • デッド・ドント・ダイ

              トム・ウェイツ演じるホームレスの元を立ち去ろうとするアダム・ドライバーが、目を離さぬよう、そろそろと後退する冒頭の様子に、確かなリズムを感じる。ルックはいつも一緒だけど、演じ分けの幅が広い、素晴らしい役者。たった数歩の奥行きの中に、臆病さと...
            • ЖЛЪЧ - ВЯРА

              Bandcamp Dailyの「Eight Artists Redefining Bulgarian Music」っていうブルガリア音楽の特集で知ったんだけど、ЖЛЪЧってラッパーヤバいね。ブルガリアのソフィアを拠点に活動するSo Call...
            • はちどり

              考えても考えても、やはり冒頭に立ち返ってしまう。大きな集合住宅の9階。主人公のウニが買い物を終えて戻ると、ドアが施錠されており、家に入れない。「お母さん、いじわるしないで!」と声を荒げるウニ。しかし自分の家は一階上の10階だった。階を一つ間...
            • Woods - Strange to Explain

              ぶっといサイケロックで攻めてきたな…と思ったWoodsの新作(僕の中で、サイケロックとサイケデリックって、必ずしも同じものを意味しないんすけど)。このバンドは、何度聴いても「こんなバンドだったっけ?」って思う。若干フォークっぽさは抜けつつ、...
            • ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

              のっけから横運動である。俺たちの「横運動」に対する爛れた執着たるや!グレタ・ガーウィグもノア・バームバックも、レオス・カラックスに、トリュフォーに取り憑かれてる。『フランシス・ハ』でグレタ・ガーウィグ自身が演じたように、NYの街を右に走り抜...
            • Gal Gadot Gifsという大量破壊兵器

              Gif楽しいよね。『ナイブズ・アウト』の公式サイトでも、登場人物別にGif配ってたりして、SNS上で如何に目立つ拡散を促進できるか、各社しのぎを削っていて楽しい。それとは違って非公式ではあるが、有名人の一瞬の動きをGifにしたシリーズ(これ...
            • ファイナル・カット

              400本を超える映画のフッテージを継ぎ接ぎして、「物語」の類型を炙り出そうとする試み。信じられないぐらい偏執的な編集の連なりが、実にありがちな「男女の出会いと別れの物語」を描き出す。女性との出会いのシーンは、『ギルダ』においてリタ・ヘイワー...
            • ミッドサマー

              強烈なトラウマを経験し、何かに依存して生きざるを得なかった人間が、圧倒的なカルチャーショックの末、遂に主体性を取り戻す物語…と書くと、まるでホラー映画のストーリーとは思えないのだ。『へレディタリー』アリ・アスター監督の長編第二作目。エンドロ...
            • Michael Stipe & Big Red Machine - No Time for Love Like Now

              今年に入ってから、Michael Stipe(R.E.M.)の音楽活動が徐々に活発化している。チャリティ的な企画でシングルが二枚(「Drive to the Ocean」「Your Capricious Soul」)出てたんだけど、それはそ...
            • SKIN(短編)

              小さな家のポーチで息子の髪を刈る父親。とにかく柄は悪そうだが、幸せそうではある。そんな家族を映した風景が、一瞬で悪夢のような状況に陥ってしまう。どこにでもありそうな、とても幸せな家庭を持つ男性が、被差別人種である黒人を前にするととんでもなく...
            • chelmico - Easy Breezy

              今年のベストPVじゃない?めちゃくちゃポップであるのに、採用している表現は容赦なく先端で、程よいところに着地しようとする生ぬるさが見えない。不安だ。特に、chelmicoの二人が、実写でも精緻なポリゴンでもなく、一昔前のローポリで表現されて...
            • おじさん文章ジェネレーター

              おじさんからのメッセージをシミュレートするツール。めちゃくちゃ好き。どんどん使って嫌われまくってください。俺は妻に送りまくったんだけど、数時間返事なかったです。怖かったみたい。https://oji.netlify.app/
            • ガイ・マディン

              勉強不足となじるならなじれ。カナダの実験映像作家ガイ・マディンの名を、去年初めて知った。最近作『The Green Fog』が渋谷のユーロスペースで上映されるというのだ。全く知らない作家、日本で紹介されていない実験映像の巨匠。観ない理由がな...
            • キュウ『ティラノサウルス』

              タイタン所属の漫才師・キュウ。ゆっくりと間を取るタイプの漫才が多く、勢いや手数で押し切るタイプとは全く異なる。「めっちゃええやん」のネタで有名になったし、俺もそれで知って好きになったんだけど、今メインでやっているような、言葉遊び、妄想、唐突...
            • インヒアレント・ヴァイス

              トマス・ピンチョン『LAヴァイス』(原題はそのまま『Inherent Vice』)をポール・トーマス・アンダーソンが映画化。ピンチョンを映画化なんて、まあ、まともに考えると正気じゃないわけ。脚注だけで膨大なページ数になってしまうほどの語彙(...

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