映画『息もできない』

フローズンリバーを観たときに流れた予告編(Youtube参照)に衝撃を受け、更に東京での公開館数の少なさと短さに更なる(悪い方の)衝撃を受けて、無理して観に行ってきました。渋谷シネマライズ。結果、無理して大正解でした。以下、予告編以上のネタバレ無し。

女子高生ヨニとチンピラが、考えられない程最悪最低の出会いを果たすところに、まずは予告編最初の衝撃があるのですが、とにかく粗野で言葉を持たない、「歩く暴力」とでも呼びたくなるようなその男=サンフン(役者は、監督・脚本等も努めたヤン・イクチュン)の暗い魅力には抗えないのが正直なところ。

ここで描かれているのは、女子高生とチンピラの恋愛物語…ではなく、暴力の連鎖、それも奇麗な輪を描いた文字通りの連鎖と、幸せの代償(これは奇しくもフローズンリバーと同主旨ながら、こちらの方が何倍も複雑に描いている。フローズンリバーも十分に豊潤でしたが)についての、非常に入り組んだ「運命」とか「業」と呼ばれるような力についての物語だと感じました。劇中でサンフンが諭すように、己の為す事は必ず返って来るという因果応報が、いくつもの複雑な波紋を描き、心の細波を起こす、そんなデリケートな表現が琴線を刺激するのです。

それにしても加齢による涙腺の弛緩は自覚していたものの、ビックリするぐらい心が揺さぶられて、まるで心臓を殴りつけられているかのような衝撃に、涙が止まらないというのも本当に希有な体験。サンフンの心に黒い影を落とした父親の存在と、その二人の関係性。同じように、悲劇を経た悲惨な家庭環境にありながら、外では勝ち気に振る舞うヨニ。サンフンが唯一無条件に愛情を注ぐ甥っ子の存在。借金取り立ての仕事と、暴力。暴力に次ぐ暴力。部下との関係。非常に緻密なマップを描いているかのように、それらの複雑な関係性が至る所で衝突し、ドラマの中で重要なシーンを描いていきます。

輪になったような暴力と悲劇の連鎖。そして、その中にあって、一筋の光明、かけがえの無い寄る辺となった二人の存在に、悲劇の影を見るとき、僕は映画を鑑賞するという体験を超えて、冷静で入られなくなるような思いで一杯になってしまいました。シネマライズでは、来週金曜日(4/23)まで上映。まだ間に合うので、是非劇場でご覧下さい!

去年に続いて、韓国映画の豊穣さにやられてしまいました。今年これ以上の映画が果たして作られるのかなあ…。

公式サイト

※シネマハスラーの評は、現段階ではまだ聴いてない。宇多丸さんは意外と酷評しそうな気もするんだけど、どうでしょうかねえ。楽しみ。

※こんなノベライズも出てるんですね。

http://www.amazon.co.jp/dp/490424916X

https://www.amazon.co.jp/%E6%81%AF%E3%82%82%...

LOADING