歌舞伎町の映画館 新宿東亜興行チェーン閉館

11月30日に新宿歌舞伎町の映画館3館が閉館した。
閉館したのは"東亜興行チェーン"と呼ばれる新宿オデヲン座、新宿グランドオデヲン座、新宿アカデミー劇場の3館で、東京に住む人なら入ったことはなくても映画館に取り囲まれた歌舞伎町の広場の景色は知っていると思います。
実は、知らない間に2008年末からこの一角の映画館が消えていってました。

新宿プラザ劇場　2008.11/7　閉館
新宿コマ東宝劇場　2008.12/31閉館
新宿トーア　2009.04/17閉館
新宿ジョイシネマ(3館）　2009.05/31閉館
新宿オスカー　2009.09/23閉館
東亜興行チェーン(3館）　2009.11/30閉館

広場を取り囲む四辺のうち三辺が閉館され、残り一辺は東急系列のミラノ4館のみ。この出来事がより深刻なのは、広場を含め閉館された映画館の再開発の目処が立っていないということ。1000席を誇る巨大な新宿プラザ劇場もそのまま残っています。これでミラノも閉館するとそのうち歌舞伎町の中心がゴーストタウン化するでしょう。

リンク先でも指摘されている通り、閉館の具体的な要因となったのは新宿バルト9,新宿ピカデリーの「シネコン」の隆盛。不幸にも同じ週の11/22には新宿バルト9が日計動員・興収新記録を立てたりして、新宿の映画館が「歌舞伎町」から「新宿3丁目」に、そして映画館事業のシステム自体も単館系からシネコンへ移行しているのは誰が見ても明白な事実です。

で、写真は先日新宿オデヲンに行って自分で撮影してきたものです。サム・ライミの映画「スペル」を見に行こうというきっかけで閉館のニュースも同時に知り、映画のレビューは後日別の場所でするとして、小学生の頃からジャッキーチェンの映画とかを（母親に連れられて）見に行った個人的にも思い入れのある新宿東亜興行チェーンの見納めとして行ってきました。

館内に入ると自分以外に待っている客は一人....。そして「芳香剤の臭いのする映画館」とサイトで噂されていたのですが、本当に芳香剤みたいな臭いがする。昔よく映画館に行くと"映画の内容と無関係に気分が悪くなる"という症状を起こしていたのですが、10年以上の時を越えてその原因はこの臭いにあったんじゃないかと想起させられました。

直前に人が集まったがそれでも30人くらい。オデオンは350席くらいなので約10/1。この広々と見れる感じは経営側の立場を無視して嫌いではない。何より映画館は広ければ広いほど良い、と2,3年前から思っていたところです。そして現在主流の"入れ替え制"では存在しない「ずっと寝てる人」がここにはいました！多分寝床にしているのでしょう。彼らにとっても、1800円で何時間も寝られる環境がなくなるのは辛い出来事のはず。

映画を見終わり、50年以上の歴史を持つ老舗の映画館が無くなるのはやはり寂しいと思いつつも、芳香剤の臭いと共にどこか既に「過去の空間」的な雰囲気も感じざるをえなかった。空間が生き生きとしていない。（唯、そのちょっと荒んだ雰囲気こそがかつての日本の映画館だった、という解釈もできるが）

翌日たまたま「THIS IS IT」を見ることになり、新宿ピカデリーに行ったのだが、やはりこちらの活気、賑わいぶりは明らかに前日のオデヲン座とコントラストを成していた。（映画「スペル」が最高だっただけに、それがマイケルとサム・ライミのコントラストではないことは言っておきたい！）特に、デートとか若者複数で映画館に行くならば、どう考えてもピカデリーを選ぶだろう。

現在でもシネコンという在り方を疑問視する人々もいるが、映画産業自体が厳しい状況に立たされ、映画館に行く事自体が衰退していく中で、ピカデリーやバルト9のような環境が映画館に向く足を再生させるのであれば、素直に時代の流れに従うのが映画にとっても幸せなことだと思う。今年のグラントリノやTHS IS ITのような話題をさらった映画をきっかけに、映画館に行くという行為が形を変えて継続するほうがよっぽど良い。

しかし、金曜の夜にも関わらず30人だった映画「スペル」はピカデリーでやったらきっとサイズは100席程度でスクリーンも小さくなると思うし、上の写真のようなどでかい看板の並んだ光景はシネコンでは見ることはできない。時代の流れには抵抗出来ないが、これが"過去の日本の懐かしい風景"と化してしまうのは、やはり寂しさを拭えないのである。

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009113002000058.html