人喰い大鷲のトリコ

2017-01-19 15:36:48


『ICO』『ワンダと巨像』のクリエイター上田文人さんのチーム「gen DESIGN」の手がけるシリーズ最新作『人喰い大鷲のトリコ』。とにかく待ちわびたし、タイミング的にも合致したのでPS4を新規購入して待機。そしてこの度クリアした。

単純に、「ボタン遊び」≒ゲームとしての完成度はそこまで高くない。とにかくカメラワークが劣悪(同じように思った人も多いんじゃないだろうか…)。あと、最後の日本語フォント、どうにかならなかったのだろうか…?とか、これだけ長い期間待たせておいて、詰めが甘いんじゃないだろうかというところも多々あった。

…とかいう不平不満を置いておこう。結論から言うと、久々に充実したゲーム体験だった。『人喰い大鷲のトリコ』には、ゲームでしか味わえない体験がパンパンに詰まっていた。

コミュニケーション(不全)の物語

「人喰い」と恐れられ、人々から忌み嫌われている「大鷲」トリコと意思疎通するのは著しく難しい。トリコの操作はすなわちゲームのトリガーとしても機能しているため、このUIが悪いのは非常なストレスになる。だが、この「コミュニケーション不全」は、ゲームのレベルデザインとしてしっかりと機能している。

最初に出会った時は、目を覚まされるのも恐ろしく、忍び足していた自分が、物語の終盤、高い高い塔の中腹、崩れた階段の切れ目の断崖絶壁で、その先にいてこちらを見つめているトリコがキャッチしてくれることを期待して精一杯の跳躍を試みた時、トリコとプレイヤー(つまり、この、俺!)の間に信頼関係が生まれている。「あっ、俺、今、信じてた…」。いつの間にか芽生えていた自分の気持ちに気づく瞬間、これこそが『ワンダと巨像』で「神のごとき高次の存在に触れた瞬間」を演出してみせたのと同じ手管である。

単なるゲームであれば不要な、廃墟を舞台とした情景や、トリコのちょっとした動きなどの情緒に関係する部分の作り込みが激しく、ウロウロと苦労している間にも細部に目を奪われてしまう。この辺の作り込みについては、初回特典についてくるBrutusのムックに詳しい。背景に単調なところを認めると手を加え、打ち捨てられた文明があたかもそこに息吹いていたかのように見せていく作り込みの技術。「ゲームとはプレイヤーの行為に対する画面の変化を楽しむ遊び(うろ覚え)」という宮本茂さんの言葉があるが、こちらは行間に命を吹き込んでいく作業、すなわち「アクションの間にある情感をも楽しませてくれる遊び」としての完成度が異常に高いのはそこでも伺える。

反転するコミュニケーション

最後の最後(ここから若干ネタバレしますよ!)、父親と思しき(いや、この子達に父親なんているのだろうか…?)男性に抱きかかえられるも疲労と怪我でほとんど動けない主人公が、これまでトリコとのコミュニケーションのために与えられていたある重要なボタンを、これまでと全く違う目的のために使わなければならなくなる瞬間がある。コミュニケーションが反転する。この瞬間の発想に震えてしまう。

またしても『人喰い大鷲のトリコ』は、終始プレイヤーの情緒を揺さぶり、プレイする前と後の世界の風景を少しだけ変えてみせる「体験」として、忘れられないゲームとなった。『ICO』『ワンダと巨像』そして『人喰い大鷲のトリコ』と描かれてきたこの世界は、またも雄弁に語り足され、その結果として慎ましやかに拡張している。牛の歩みを以って少しずつ語り暴かれていく「ICO」の世界。このままゆっくりゆっくり少しずつ紐解かれ、それでもまた新しい謎の供出を以って、一生語り尽くされない世界として愛でていけるのであれば、ファンとしてこれほど嬉しいことはないなと感じた。

ゲームとしての難易度はさほど高くなく、特に一体の巨像を攻略するのに数時間かかっていた『ワンダ』と比べると、雲泥の差である。じっくりと廃墟を見回し、何度か脱出を試みていると、いつの間にか答えが見えてくる。ちょっとアクションゲームに苦手意識の有る方にもオススメ(…苦労するとは思うけど)。


Writer
mcatm
Date
2017-01-19 15:36:48
Comments
1
  • mcatm

    pelepop / drawing4-5 / ripping yard本職はWEBとデザインと風呂場ラップっす。

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