SRサイタマノラッパーSkype対談 - ラボ vs mcatm

何度目の試みになるのだろう…。一体何度語ればいいのだろう…。ripping yard名物(笑)サイタマノラッパー対談!埼玉在住のラッパーであるところのラボ(from JMQ)が、己の境遇を映画に全力で投影した結果、内容に激しく裏切られて慟哭。その様をtwitterで確認していたmcatmが、skypeでの対談を提案。このような歪な企画がこうして実現しました。

ラボがIKKUに何を期待し、如何に裏切られたのかっ?!mcatmの反論はっ!?二人の認める名シーンはっ!?サイタマノラッパーから炙り出した「日本語ラップ」、そして、この映画に何を見、何を望んだのか!「サイタマノラッパー2」公開中のタイミングで送る、三時間の対戦の記録。中心地から遠く離れた場所でささやかにシャウトする二人のラッパーによる「サイタマノラッパー」評([[[ちなみに超ネタバレ]]])です。

俺はきっと号泣するだろうと思ってたんだ

[[ラボ]]:この映画に関する感想って、実は話そうとすると何種類かの話になる。「映画のストーリーの話」「この映画が愛されていく過程の胸湧く物語」「日本語ラップの話」「俺の話」。あまりに幅広く、底も深いので気が遠くなり、整理しづらいタイプのものなので、混同してしまい、述語がなにに掛かってるのかわかんなくなってしまう…。

まじどこからいくか…。じゃあ本丸からいっちゃいます。[[[俺が第1回目に感動できなかった敗因]]]。

[[mcatm]]:きたね。

[[ラボ]]:まずでかいとこ。[[[俺自身と共通点が多すぎた]]]。埼玉県北というぬるい土地、アマチュア日本語ラップ、BBOYにはなりきれない俺、役所!これだけ多くの要素が重なっている映画を観るということは、一映画以上のものを託しすぎてしまうよ。しかも俺の好きな人たちがこぞって絶賛しているわけだからさ。

[[mcatm]]:ちなみに、どれぐらい身近な風景だったんですか?

[[ラボ]]:おっぱぶは見たことある。冒頭の道路の看板とか分かる。[[[「おっぱいいっぱい」って IKKUがライムを練ってる公園でお昼食べたことあるレベル]]]。

[[mcatm]]:基本的には、そこはプラス要素かと思っていたよね。ラボさんも見る前はそうでしょ。

[[ラボ]]:それはそうだよ。わざわざ誕生日プレゼントに選んでもらうくらいだし、見る前に「ごめんこれはこれこれこういう内容で俺にとって大切な映画だからちょっと外してもらえるかな?[[[泣いちゃうから]]]」って奥さんを上にあげて見たのだよ。

次。[[[映画を観る前に主題歌を聴きすぎた]]]。というか主題歌から入ったからね、俺。陽気なベースラインに絶妙ないなたさのライム。気持ちよくて何度も聴いてて、そこから逆算して映画を想像してた。純粋にあの曲自体が希望を残したエンドロールそのもの、本編のそのまた先の物語、だなんて思わなかったからさ。この3人がすっかり自分の言葉をものにして、この素晴らしいトラックにのせて、ショーグンがグングン形になっていく映画だと思ってた。[[[そしたら違った]]]。その曲に向けて(直接はラストと結びついていないのかもしれないけど)進む映画だったので、あ、あああという。

[[mcatm]]:あー難しいっすねー。

[[ラボ]]:そして一番の誤算というか不満点。

[[mcatm]]:ほい。

[[ラボ]]:おれはこんな映画だと思い込んでた。周囲の評判を見聞きしてから実際に映画を観るまでに時間がかなり空いてしまい、加えて共通点の多さから勝手に自分の思い、歩みまで託してしまい、発酵させてしまったというのもある。思い込み、以下のとおり。

どうしようもないボンクラのIKKUたち。よくは分からんが、ヒップホップにかぶれている。すごく表面的に。ラッパーになりてえ。夢をつかもうぜ。世界に発信するんだよ!ソウルをさ!
だから新聞を切り抜いて「なんかいい政治ネタない?国際情勢とかさ」といったりしている。自分自身で語りたいことはない。存在していることすら気づいていない。
そこでその表層的なラッパー、ヒップホップというものをまんま形にして、会議室ライブ(名場面)をやる。ここで初めて一般的な社会、というか常識的感覚と、ヒップホップなるものの間の深い溝(いかに特殊文法にまみれていて、それに守られているものなのか、特殊文法を習得した一部の受け手に守られている世界なのか?だって、見てごらん!教育委員会のお姉さんのまっすぐな視点に君らは答えられるのかい??みたいな)を思い知る。

[[mcatm]]:うん。

[[ラボ]]:

そして、数々の悲惨な場面に遭遇して、どんなにブカブカな服を着て、ライムだ、ビートだ言っても、自分の本質は、ちっとも変わらないことを思い知る。みひろによって明かされる高校時代のいけてなさ、コンビニ駐車場ではヤンキーにこづかれ、あまつさえ思いのあるみひろに目撃され、大切な存在のみひろをKEN先輩に汚されたくないために歯向かうも尻すぼみであり、後輩のマイティーには見切りをつけられ、TOMにも去られ、自分の周囲を満たしていたもの、守ってくれていたもの、本来は自分がもっとも見据えなければならなかったもの(自分自身)を隠してくれていたそれらを失い、みひろもこの場を離れ、ついにみひろがグサリと指摘した「お前が頑張れよ(変われよ)」について、彼なりに出した答えが「焼き肉屋のバイト」なんだと思うんだよね。

[[mcatm]]:うん。

[[ラボ]]:そこでTOMが来た。そこでIKKUはラップせずにはいられなかったわけだよね。

[[mcatm]]:うん。

[[ラボ]]:初めて語るべき言葉が彼の中で生まれたんだよね。なので彼がするべき(べき、というか俺が思いこんでたってことなんだけど)ラップはさっき書いたような内容だと思うんだよ。

俺の今までのラップは借り物であり、俺は全然変わることは出来ていなかった。友は失い、大切な女は去り、俺には何もない。何もない。でも、俺はレジ打ちを始めた。それにはこういう心境の変化があり、気づきがあり、今こうしてレジを打ってるんだ。ヘイ、TOM、また一緒にラップやろうぜ。

それはたぶん、彼が初めて、[[[本当に伝えたいものを自分の言葉で語る]]]ということを会得した感動的な瞬間で、俺はきっと号泣するだろうと思ってたんだ。

[[mcatm]]:うん。

[[ラボ]]:でも初めて観た時、違和感、というか「あれーーー」と思ってしまったのは、IKKUが力を振り絞って紡ぐラップの中に[[[「でかくなるぜ!」とか「夢が」とか「世界へ羽ばたき」とか「俺らの才能」とか、彼が打ちのめされる前と全く同じテンションのふわふわした内容]]]が多く入っていて、「え、ここでループするのか!」って思ったんだよね。戻っちゃうじゃん!

「夢が」とか「世界へ羽ばたき」とか「俺らの才能」とか入れるのであれば、中盤とかでデモテープを録音する場面、ヒップホップにのめりこんで MIXテープを作るとか、レコード漁るとか、なかなか入らないラジオを録音するとかのシーンを入れて「俺は才能ないかもしれないけど、だけど!IKKUは!俺は!ヒップホップが好きでしようがないんだよ!」って思わせる場面がないと説得力がないと思うんだ。

[[mcatm]]:それ、宇多丸さんも指摘していたところですねー。

[[ラボ]]:HIPHOPが特別好きなわけでなくて、北関東に住む、どうしようもないボンクラが、なんとか駄目な自分を変えたくて何でもいいからただラップに手をつけただけで…っていうのならそれでも全然いいんだけど、ならば「夢が」とか「世界へ羽ばたき」とか「俺らの才能」みたいな最終目標を『ラッパーになりたい』に設けているようなラップにすべきではないのでは、って思ったんだ。

いま語った部分が結局一番の部分。

[[mcatm]]:例えば、ラボさんと観に行ったB-BOY PARKでの「地方から出て来た新人ラップユニットの3曲目問題(注:出てくるグループのほとんどが「1曲目→俺登場ライム」「2曲目→俺ら地元で極悪最狂ライム」「3曲目→みんなで夢を掴もうぜ、じゃあな!」でステージを去る。あれ、そんな話だったっけ?みたいな繰り返しだったので驚いたという体験談)」にも似てるのかもしれないっすね。だから基本的にね、凄くラボさんの言いたい事は、分かる。

でも、 IKKUが最後に「獲得した」とされている言葉が借り物だった件、ですけど。僕、あれはね、やっぱり[[[成長途中の人だと思う]]]の、色んな意味で。この話自体が、IKKUが何らかのゴールに向かう途中の物語であると思うんです。

[[ラボ]]:ポッドキャストでもいってたね。

[[mcatm]]:あ、ホント?じゃあ、ぶれてないっすね。よかった。
で、僕はラボさんの言う事を、「なるほど、それはそうだ」と納得して聞いたの。

確かに、あれは、借り物の言葉だと思う。そのことに、観た時はあまり気付かなかったけど、言われてみれば本当にそうだと思う。しかし、まあ、この人は[[[本当の意味で大成した人ではない]]]という事は、劇中何度も執拗に語られているから、それは肌で感じているわけです。

[[ラボ]]:うん

[[mcatm]]:だから、僕はあのシーンの意味は、例えば、借り物が借り物である、という以前、ひょっとしたら単なるファッションだったかもしれない(それこそ、MIXテープ作ったり、本当に入れ込んでいたわけではない)[[[ヒップホップという「借り物の文化」に、真の意味でコミットした瞬間]]]だったと思ったんです。
ラボさんの考える「借り物ではない言葉」、IKKU の言葉をIKKUの表現で語り出す、というフェイズは、その次なのかもしれないな、という意味で、僕はエンディングを「(おそらく)希望へ繋がっているエンディング」と捉えられたんですよね。

[[ラボ]]:ああ…。[[[ああああああああああ]]]。

[[mcatm]]:だから、俺は、号泣メーンだったの、あれは。

[[ラボ]]:ヒップホップに対するファーストコンタクト、という解釈、があったのか!そういう見方をすれば…[[[やばい泣きそう]]]。

[[mcatm]]:うん。そう思った。

[[[日本語ラップっていうのも、根本的にそういう「借り物感」をずーっと抱えている文化]]]でしょ。そういう距離感も重ね合わせているのかもしれないですね。

まあ、ちょっと分からないのは、僕は既に監督がこの映画をシリーズ化したいという意向を示している事を知っていたから、そういう奥行きのある見方が出来るのかもしれなくて、これだけで終わる映画だとしたら、モヤモヤが残ったのかもしれないです。でも、今となっては分からないから、あんまりその可能性は考えない事にしますけどね。

[[ラボ]]:本来「俺の生涯の映画」になるもんだと思ってた一本を失った喪失感が結構でかくて、でも今回こうして話すことが出来て、新解釈のひとつも得ることができたので、「体験」となり、とてもうれしい

[[mcatm]]:そうそう、ラボさんの意見には同意出来るんですけど、ただ一点、IKKU がループしているという部分には納得出来ないんです。
映画が始まったばかりのIKKUと違って、言葉は借りてきたものだったとしても、自分の言葉としてそれを吐き出す事が出来た、っていうところが、IKKUの成長だったんじゃないかな、と思います。

[[ラボ]]:ああ、その解釈だとそうかもしれない。俺の最初の見方だと「夢をつかもうぜ。ラップで羽ばたこうぜ」は、数々の苦難を経る前の言葉だと思えて、「ラップをしようぜ」なら俄然納得できるんだよなー。

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あれはすべてのアマチュアミュージシャンにとって悪夢だと思う

[[ラボ]]:冒頭で言ったけど「この映画が愛されていく過程の胸湧く物語」は特別。入江監督はこれでものにならなかったら映画辞めようとして最後だから自分の好きなヒップホップを題材にしようとしたんだって。んで、完全ラップ素人の役者陣を合宿と称して泊めてさんぴんのビデオを三日間見続けて[[[「自分なりのフロウを確立しろ」]]]って言ったとか。そんなストーリーや、[[[本当に役者陣がラップをものにしてしまった痛快さ]]]、ヒップホップを飛び越えてしまって青春映画として映画そのものが徐々に支持を得ていく様は、胸躍るとしかいいようがない。

[[mcatm]]:ラボさんのSR名シーンって、挙げるとしたらどこになります?複数回答可で。

[[ラボ]]:それやるか!あるんだよめちゃくちゃ!好きなんだよ!やっぱ!名シーンと名セリフ。これきりがないからもう順不同でぜんぶいこうよお互い。

[[mcatm]]:いっすね。

[[ラボ]]:「おまえ、宇宙人かよ」

[[mcatm]]:いいね。

[[ラボ]]:西海岸系?東海岸系?「埼玉、海ないっすよ」

[[mcatm]]:「ドュリームって…」←これ、一番好きかもなあ…

[[ラボ]]:最初の質問者「昔のディスコみたいで懐かしかったです…。あの、歌詞の内容は、本心で?実体験…に基づいてですか?」…というか会議室シーン全般…。

[[mcatm]]:質問者シーンはみんな良い!最後の質問者の迫真の演技!

[[ラボ]]:[[[あれはすべてのアマチュアミュージシャンにとって悪夢だと思う。]]]

[[mcatm]]:ホントそう!ああいう場面に出くわさないために、どれだけの労力をはらっているか…。

[[ラボ]]:でさーーーーー、あのシーンのやばいのは当初のショーグン3人のキャラクターイメージを完全に書き換えてしまうんだよね。素直なマイティー、マイペースTOM、イケイケIKKUが、イケイケマイティー、結構流されるTOM(株の勉強を…ラスト近辺で俺も東京にいくかなー)、一番駄目なIKKUに。

[[mcatm]]:やっぱ、ブロ絡みで、余裕があるんだよなーマイティ。あの受け答えも本当に映画史に残ると思うんだよなあ。負のマイクリレー。

[[ラボ]]:司会者から「我々高齢者もこういう音楽を勉強しなきゃいけないんですかね?そうなんですかね?(このラインをDVDで見直してほしいと思う。司会者のせりふを聞くとなにから指摘していいか分からないほど絶望的な両者の距離を感じる。[[[神様おりてる]]])、さて、えー曲目は?」って聴かれてノリノリで曲名を告げるマイティー、いやメンバー足りないんで無理ですって交渉するTOM、何か言おうとして何も言えない駄目IKKU。なんかラストより会議室シーンが映画史に残る気がしてきた。

もう一度言おう[[[「あれはすべてのアマチュアミュージシャンにとっての悪夢だと思う」]]]

[[mcatm]]:教室ライブ思い出さなかった(注:僕らは大学の教室を借りてライブをやっていました)??

[[ラボ]]:思い出したよ。ばりばり。で全体的に、あの会議室シーン(またあの質問シーンがこちらの予想より10分くらい長く感じるんだ。次もいるのか!って)もそうだし、みひろもそうだけど、この映画は全体的に詰問シーンが長い…。

[[mcatm]]:三人が腹くくってから、IKKU とTOMのエンジンがかかるまでの居心地の悪い感じと、それでもやってるうちになんだかんだで盛り上がっちゃって、その後の悪夢に繋がる流れは最高!

[[ラボ]]:あそこでシーンを切るのが鬼だよね。爆笑。

[[mcatm]]:ラストはあれだけ見ても意味が分からないけど、会議室はあそこだけで全部伝わる。

[[ラボ]]:普段我々がなんとか避けてきている、流してもらっている局面を、あの映画は流してくんないんだ。痛いんだ。いくつもあるんだけど。そういう場面。「犯すぞ!」も最たるモンでしょ

[[mcatm]]:あれは痛かったなああああ。流さないよねーー!

[[ラボ]]:どうしたって勝てない相手、女みひろ(自分よりスケール何倍って分かってる)に対して捨て台詞を中学生っぽく言うんだけど、ながさねえんだ!だから困っったんだ。[[[仕方なく「みんな知ってんだぞ」って言っちゃったんだ]]]。別にそんなこと言いたいわけじゃねえんだ。

[[mcatm]]:あの、俺の男女間コミュニケーションの根本を支えてる[[[「女は男より精神年齢が三歳上」]]]という話を思い出す…。

[[ラボ]]:[[[ポッドキャストでも言ってた(笑)]]]

[[mcatm]]:ぶれねえなー俺!

[[ラボ]]:で「だからどうした」って言われちゃうんだ。言いたくないことまで言ってしまい、それすら跳ねかえされ、目の前に立ちはだかり、逃げ場がなく(!)、一番みたくない「変わらない自分」を指摘されてしまうんだ。

[[mcatm]]:みひろ!

[[ラボ]]:みひろ名場面と言えば、まだまだあるんだよ。最後、IKKUが消えてから、みひろは重い荷物を一人で抱え、長い石段をふらつきながら登る、[[[その背中のか弱さ]]]。(一応それだけじゃ伝わらない観客のために、「ぼそぼそ、あれみひろじゃね?」とつぶやく男子校生もサービスして盛ってあったけどそれは、まあサービスで)あの石段の後姿はIKKUといたときには見せることのなかったか弱さで「彼女もまた」シーン。重そうなんだよ、ふらつくんだよ。

[[mcatm]]:確かにそうですよねー。

[[ラボ]]:ポッドキャストでも言ってたけど、あのCD渡すシーン(小学生が隣町へ引っ越す女の子にメンコを渡すシーンみてえだ)の迷った末に受け取る[[[みひろの表情はなんなんだろう]]]ね。もう随分前にみた一瞬だからわかんないか

[[mcatm]]:うん。あれは凄いと思う、本当に。なんか、あそこって、「嬉しい」と「悲しい」のグラデーションで表現するような場面だと思うんだけど、[[[フォーミュラでは割り切れない複雑な顔]]]してたんですよねー。

[[ラボ]]:それともしかしたらあの表情に結びつくのかもしれないけど、なんでみひろはばかにしながらIKKUにちょっかいを出し続けたのか。

[[mcatm]]:凄く雑な推論なんだけど、所謂、一般的な世間、それもこの場合埼玉の田舎という世間から、浮き上がってるその距離感にシンパシーを抱いていたのかもしれないですね、みひろとIKKUは。みひろとIKKUでは格の差がありすぎるけど、さっきラボさんの言っていたようなか弱さとかも含めて、世間という大きなものから見ると、互いにちっぽけというか、その中で浮き上がろうとする距離感みたいなものですかね、二人を結びつけていたのは。

[[ラボ]]:あ!!!二人で映画観るとすごいな!なんか大切な映画になってきた。

[[mcatm]]:誰がどう見たって、みひろからIKKUへの恋愛感情はないもんね。一見稚拙な映画に見えるけど、人間関係を丁寧に複雑に慎重に描いてる作品だと思うんですよね。表層は大雑把なんだけど。

[[ラボ]]:[[[いい映画作ったね入江監督]]]。[[[愛される映画]]]というか。

[[mcatm]]:うん。愛される資格を持った映画ですよね。ラストシーンの人間関係の入り組み方も、芸術的だなとすら思ったわけで。

[[ラボ]]:うん。みひろに関してだいぶ落ち着いたので名場面乱射しよう。TKD 先輩の登場wwwwwと第一声wwwww

[[mcatm]]:未だに真似するわwww

[[ラボ]]:TKD 先輩の真似が受けるって言ってた意味が分かった。あれも神様おりてきてるよね。つうかTKD先輩芸達者なんだね。DVD付録でめちゃくちゃおしゃれなミュージシャンでライブやってて、フリースタイルもプロっぽいんだ。

[[mcatm]]:TKD先輩の何がラボさんを惹き付けましたか?

[[ラボ]]:玄関の農家っぽさ。北関東の農家。俺の子どもの時の友達の家ぜんぶあれ。

[[mcatm]]:ははは。そりゃリアルだ。

[[ラボ]]:病弱って事前説明あったんだっけ?伝説のトラックメイカーってだけしか考えてなかったから、爆笑した。一番の爆笑ポイントかな。

[[mcatm]]:葬式とか、なんだかんだで悲惨な目にあってるキャラなのに、全く悲壮感が漂わないって凄いっすよねww。一応、病気してる説明はあったと思う。

[[ラボ]]:あとラストシーンの TOMがラップの途中で「俺はラッパーになれなかったんだ!」って叫ぶところ。唐突にラップじゃない。虚をつかれた。

[[mcatm]]:TOM いいよねーーー。会議室のTOM、最高に好きなタイプのラッパーなんですよ。

[[ラボ]]:ポッドキャストでも(略)。[[[俺はファンか]]]。

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人として大事な色んなものを、肌着の間に落として来る仕様

[[ラボ]]:基本的なことなんだけど、主題歌のトラックが良い。スクラッチも。あとこれは声を大にして言いたい。[[[間奏のピアノパートは実に秀逸で、あの数十秒があったからこそラップ好き以外にもアピールしたんじゃないかと思う]]]くらい。サントラとして大切。あのピアノパートの余韻が地方都市のいなたさ、日本語ラップの持つ気まずさ、3人の愛すべきボンクラたちに対する愛しさを異常に増幅させるんだ!

[[mcatm]]:あと、宇多さん言ってたけど、オープニングの車のシーン、凄く格好良い。あの曲やればいいのに、って。

[[ラボ]]:ヒップホップPVでも車でのりのりって最高だよね。何かほかに名場面ある?

[[mcatm]]:みひろが出てくるシーンはみんな好きだなー居心地悪くて。スーパーのシーンとか。あの、ダイエーっぽい…。

[[ラボ]]:[[[あれは「キンカ堂」かな(笑)]]]。深谷駅前のさびれ百貨店。[[[俺らの結婚式会場の近く]]]だよ。

[[mcatm]]:わー。それがDELAさん(注:drawing4-5の初代ギタリスト)の言ってた…。DELAさんの、ジモティーっぽいはしゃぎ方も、楽しそうでいいな。

[[ラボ]]:ジモティーっぽいはしゃぎ方も正解だと思う。だってそんなチャンス滅多にないもん。尾道に住んでるわけでもないし。

[[mcatm]]:うん。俺はできないから羨ましい。

[[ラボ]]:本屋コーナーに行く途中に、婦人服売り場を通らなければいけないっていうのが地方を描く上で重要なポイントだよね

[[mcatm]]:あああ!肌着売り場とか。

[[ラボ]]:強制的にもう、どうしたって、かっこがつかない仕組みになってるんだよ

[[mcatm]]:もう、[[[人として大事な色んなものを、肌着の間に落として来る仕様]]]になってるんですね。

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俺日本人だから最初超笑って、そのあとたまげた。なんかわかんねえけど、世界すげーって。すげーでたらめって。

[[ラボ]]:関係あるかないかわかんないけど、日本語でラップをやるということなんだけど、これに関して奇しくも宇多丸がリスペクトって曲で一行で言っちゃってる(「例えばイタメシ パスタにたらこ足した メニューが定番と化した」)。よく日本語でラップをすることは「黒人が歌舞伎をやるようなもんだ。な?どんなに努力したって無理だろ?」という論調があったりするけど、[[[黒人がハーレムで歌舞伎をやり始めて、誤解と試行錯誤を繰り返して、50年やってみたら…]]]というのが日本語ラップに言えると思うんだ。

[[mcatm]]:うん!!

[[ラボ]]:一般人にとって日本語ラップは黒人のあれになりたくてやってるんだと映ってる。それが誤解のもと(でもそうとられて仕方ない人もいるし、実際そういう人もいるから複雑だけど)なんだよな。

[[mcatm]]:これまた最近のテーマの一つなんですけど、[[[「正解が正しいわけじゃない」]]]ってやつね。

[[ラボ]]:そうそう。それが堂々とでーんと言い切れるのがヒップホップ。へレニズム文化知ってる?

[[mcatm]]:はい。西洋文化とオリエンタル文化が、思いっきり混じり合っちゃったやつね。

[[ラボ]]:高校のとき世界史でかじり知った、だからあってるかどうか分かんないけど、超西洋人の顔付きした仏像とかあんの。俺日本人だから最初超笑って、そのあとたまげた。なんかわかんねえけど、世界すげーって。すげーでたらめって。[[[日本語ラップ。それでいいじゃん。]]]

[[mcatm]]:うん。

[[ラボ]]:そう、それは西洋でも東洋でも作れない、じゃあ丁度バランスとって作ってみようと工夫して…でもないでしょ。な、なんかできちゃった…って種類のもの。

[[mcatm]]:しかも、ヒップホップ自体が、そもそも[[[相当歪な芸術]]]なのにね。

[[ラボ]]:そうイビツ。[[[勘違いと思い込み]]]。

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ヒップホップにすら触れたことのない人たちが、ラップを、ヒップホップを、自分の言葉をものにする映画

[[ラボ]]:あともう一つだけね。言わせて。これ最終結論とも結びつく。サイタマノラッパー3はどういう映画にすればいいのか。

[[mcatm]]:このskypeの最後はそこだよね、僕もそう思ってました。

[[ラボ]]:95年にさんぴんとかブッダとかあって日本語ラップ冬の時代が終わりを告げ、結構音楽シーンの中央にきたじゃん。

[[mcatm]]:ジブさんとかYou the Rockのマス向けブレイクもあり、その後の世代の活躍もあってね。

[[ラボ]]:それによってようやく[[[「あ、日本人がラップしてもいいんだ」という時代が到来した]]]と思うんだよね。ハイソサエティな人たちに真っ先に受容され、後にストリートな人たちがHIPHOPを取り戻したという向こうとは逆な展開だったけど、ようやく「あれは黒人の音楽だよ、日本人じゃ無理だろ」という論争が一応落ち着いたと思うんです。

で、次。これは俺なんかものすごい関わってくるんだけど、じゃあ[[[日本人なら誰でもラップしていいの?]]]って問題。

[[mcatm]]:ほう。

[[ラボ]]:もちろん[[[建前上は]]]「誰でもいいに決まってるじゃん」だけどさ、俺なんかからすると、全然そんなことなくて、あれは結局「かっこよい都会の文化人か、ストリートライクなBBOYがやる音楽」ってことになってたと思うんだよね。言葉を選ばないといけないので難しいけど。でも分かるでしょ?[[[そのどっちでもない俺がラップしていいの?]]]って、やっぱりすごいあった。いや全然あるだろ。

ここが決壊したタイミングが正直真っ只中にいたからかなー、よくわかんないんだけど、すでに決壊してだいぶ経つよね。で、俺も胸をはってラップできるようになった(ほんとはこういうことを言うのは恥ずかしいけど実際はそうなんだ)。だからこそサイタマノラッパーって映画が割と違和感なくできたんだと思うんだよね。埼玉の深谷でも、ニートでも、ブロッコリー農家でも、ほんとはイケてなくても、ラップしてる人たちもいるんだよ。そうそうこういう子たちいるよねーって。

で、3以降では更に、ヒップホップにすら触れたことのない人たち(層)が、ラップを、ヒップホップを、自分の言葉をものにする映画にしてほしいんだ。

熟年離婚を迫られた退職後の団塊親父。
望まない結婚と出産により社会の片隅で、半径1Mの生活を余儀なくされている専業主婦。
寝たきりが続き自尊心を失い、ただ雲を眺める毎日のお爺さん。
前に俺がツイッターで書いたけど、中学生のいじめられっこ。

いじめられっこが明日が来なければいいと思う力、苦悩、その強さ、ボギャブラリーは我々がちょっと思いついたライムを遥かに凌駕するでしょ

[[mcatm]]:うん。[[[それこそ、自分の言葉を獲得することになる]]]だろう。

[[ラボ]]:なんかそういった[[[ヒップホップに出会う前の人たち(もしくは普通距離のある層)が、自分の表現を獲得する瞬間を見たいなって思うんです]]]。以上。どうかな?

[[mcatm]]:さっき、2のB-Hackも含めて、そういう色んな階層の人達が、少しずつ自分の言葉を獲得していくという話にはなりそうですよね。ただ、その、3になって、「ヒップホップとの距離がある人」がヒップホップという文化の強さ、効能に気付いて、変わっていくという物語だったら、[[[それは社会を変えるとすら思う]]]。

[[ラボ]]:2は女の子なんだよね。観たい。女の子なりの葛藤についてラップして、ラップを使ってなにか成長してくれてればいいな…。シリーズ化を考えたっていうのはやっぱり「ヒップホップとの距離がある人」路線も視野に入れてるんじゃないかなあと思ってる。青春映画の枠を越えて。

[[mcatm]]:うん。そう思います。あと、俺はね、 そういう人達の成長を通して、IKKU達がどう変わっていくのか、それに興味がある。

[[ラボ]]:うわー!!やばいね

[[mcatm]]:というのは、やっぱり1では担保してるわけじゃないですか、その後の活躍を。それで色んな部分に目をつぶってるというか、期待している。IKKUが、自分の言葉で語れるようなラージなMCじゃなくても、俺らはいいんです、[[[シリーズの最後に、最高のMCになってくれさえすれば]]]。

[[ラボ]]:でも、2以降は[[[みひろが出ないんでしょ………………………]]]。

[[mcatm]]:でもさあ、みひろとIKKUの話にもオチは付いてないと思うんですよね。それは、かならずしも物語上で語られる、ということではなくて。長いシリーズの末に、心からかけがえのないMCになってくれればいいんですよね。そして、みひろとの関係に、僕らの腹にきちんと落ちて来る、なんらかの決着があれば、それが僕は見たいと思えたから、SR1は最高だったんだと思うんです。

[[ラボ]]:なんかさ、[[[今までネット上で見たあらゆる評より、今回のやりとりは俺にとって大切だ]]]。

[[mcatm]]:うん。俺もDVD買いたくなった!

[[ラボ]]:ラストがラップとのファーストコンタクトだろうという見方の件、みひろがIKKUにちょっかい出し続けたのはシンパシーだという件、一人ではちょっと無理だった日本語ラップの件、3はこうあってほしい件はずっと頭の中にあっていつか誰かに伝えたかったので嬉しかった

[[mcatm]]:というか、映画って幾層にも解釈出来る複雑なものだから、沢山の人と話した方がいいですよね!

[[ラボ]]:ほんとだね。

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さて、mcatmである僕は、昨日サイタマノラッパー2を観てきました。色々言いたい事はあるんですが、ひとまず今日、ここでこの対談をアップしておきます。そして、僕たちのサイタマノラッパー考察は、SR2〜B-hackの活躍するサイタマノラッパー2へとその舞台を移していくのでした…。

ラボ
http://twitter.com/labofromjmq
http://www.myspace.com/labofromjmq

mcatm
http://twitter.com/mcatm
http://www.myspace.com/mcatmcatmcatm

http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B0039XIA7A/ri...

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