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哭声/コクソン

シネマート新宿が人の群れですごいことになってた。まるで飛行機飛ばなかった時の空港みたい。これだけの数の人が、過剰な暴力描写で名高い名作『チェイサー』『哀しき獣』を撮ったナ・ホンジン監督最新作を観に集まっているというのは、捨てたもんじゃないなと思う。『哭声/コクソン』。期待通りの傑作でした。

コクソンという名の村で、自分の家族を残虐に殺害するという謎の発狂事件が多発。その犯人は皆、肌に酷い湿疹が出ているという共通点があることに気付いた警察官が、ある日、自分の娘の身体に同じような湿疹があることに気付く…。

その怪事件の原因と目されている日本人役を國村隼が怪演。褌一丁で鹿の死体にかぶりつく演技が独り歩きしているが、とにかくどっしりした声、不遜な眼差しに、「敵かな?味方かな?」メソッドが遺憾なく発揮され、「この悪そうな人、本当は良い人なのかもしれない」…など、数分毎に自分の直感がひっくり返される感覚が新鮮。「この映画は、オカルト風味のサスペンスである」「社会派を気取ったドタバタコメディである」などといった定義が出来るのだが、起承転承転承転承転承転承転承転承転承転承転承転転転転転…みたいなことを延々繰り返すため、自分が今、何を観ているのかよく分からなくなる。最終的に、自分の解釈や立ち位置次第で、この映画のテーマやジャンルがまるごとひっくり返るような、挑発的な構造になっており、僕自身、何が真実なのか未だに分からずにいます。(解釈についてはTwitterなどで様々な意見を目にしていて、どれも面白いです。一旦自分でとことん考えてみるのが吉)

何度か観たくなるレベルで細かい伏線やミスリードが張り巡らされており、更にそれらを自ら蹂躙するようなことも平気でやる、文字通り型破りな怪作なので、ネタバレを不意に目にしてしまうリスクを避けるためにも、是非劇場で!

  • しかしながら、この世界観って、白石晃士監督がずーーーっと昔から取り組んでいるもの。なので、みんな白石作品観に行きまくって、予算潤沢な作品を撮ってもらいましょう。このレベルの撮ってくれるはず

  • 襲撃に際して武器をかき集めるシーンで、誰かが「骨」持ってきてたの最高だった。セルフオマージュ!

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