WET(PS3/XBOX360)

論者の視点/角度によっては語り方を変えざるを得ない程、とても一つにはカテゴライズし切れない多様な属性を持ったゲームが、「3Dアクションゲーム」というジャンルの中で乱暴に取り扱われている。例えば、マリオギャラクシーとPrototypeのような箱庭型アクションを同一の箱に収める事は可能だろうか、という問題がある。しかし一方、ジェットセットラジオは、マリオ型アクションの次の世代、アクションゲームの形を変えたエポックメイキングなソフトであるが(断言)、あれはPrototypeやGTAと同様、箱庭型3Dアクションゲームとも言えなくはないのではないか。このように、「アクションゲーム」という分類の不自由さは(特に分類軸の適切なアップデートがなされていない点からも鑑みると)、改めて指摘してみると深みのある議題に成り得ると思う。

かくの如き「定義論」を序盤から吹っかける所以は、次の暴力的な結論の言い訳のために過ぎない。そう、暴論である事を承知で書く。Bethesda Softworksの手がけた「WET」は、2010年の現時点で3Dアクションゲームの最高傑作である。(勿論、僕の乏しい3Dアクションゲームプレイ歴の中で、というエクスキューズがつくが、そんな細かい言い訳などしているような場合じゃないのだ)

便利屋で人間業とは思えない身のこなしで、与えられた任務を冷徹に片付けるRubiと、麻薬シンジゲートとの戦いを描くこの作品。世界観はタランティーノ的なものを思い浮かべてもらいたいのだが(主人公Rubiのルックスやキャラクターは、モロにキルビルを思わせる)、グラインドハウス〜B級アクション映画といった70年代的なイメージを大胆に援用している(レトロフューチャーは、Bethesdaの得意とする演出手法である)。ギンギンに集中力を高めたアクションの連続の狭間に、レトロなCMがするっと挟み込まれる様は、小気味良く気が利いており、テレビ映画を見ているかのよう。

そんな映画の如き斬新なビジュアルが特徴的なこのゲームは、その斬新さ新奇さが単なる視覚的な快楽の為に装弾されているのではなく、ゲーム性に深く結びついているのが特徴だ。返り血を浴びて視界が赤く染まり、その次の瞬間から極端な赤黒白と高コントラストの色彩が特徴的な画面構成に切り替わる「RAGE」モードや、カーチェイスや荒唐無稽な空中戦におけるゲーム性の変化などが非常に分かり易い例だろうと思う。ビジュアルの切り替えと同時に、プレイヤーに課せられるミッションも、相応なものに切り替えられる。

こうしてゲーム性は目まぐるしく変化するが、根本的なゲーム内に於けるキャラクターの肉体性は一貫しているのも特徴。AがジャンプでBがスライド、Xで刀を振り、RTで銃を撃つ。そしてLTによるRubi視点。基本的なアクションに於いて、この身体性は繰り返し用いられる(「一貫した身体性」というのは、アクションゲームを評価する際の重要なポイントの一つだと思う。Aボタンの意味が場面によってコロコロ変わるようなゲームは、画面内のキャラクターへの没入感を著しく削ぐ)。

パルクール〜フリーランニングの豪快なイメージは、古くはプリンス・オブ・ペルシャのような素朴なものから、決定的作品「アサシンクリード」もしくは「ミラーズエッジ」を経て、様々にUIの革新を伴い、進化している。例えば先に挙げた「Prototype」やその祖先的な作品「スパイダーマン」などでも、箱庭をどのような方法論で攻略するか、といったマリオ的な素朴な問いから一歩も二歩も先へ踏み込んだ方法論を採用する起爆剤としてパルクールは利用されている。そして「WET」では、一貫した肉体性を伴ったボタンアクションとパルクールが組み合わされ、自分の身体ではなし得ないアクションの爽快感(Rubiは端的に言って人間じゃあないね)と没入感を同時に味わう事が出来るのである。

日本ではPS3版しか発売されなかった本作。お世辞にも、広くプレイされているとは言いがたい。難易度も低くないため、一般にお勧め出来るようなソフトではないが、3Dアクションゲームの現在形に興味がある好事家には、強くお勧めしたい一本です!!!

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