2006年フィギュアスケート全米選手権本戦におけるStephanie Rosenthal

地区予選から勝ち上がってきた無名のアイススケート選手が全米選手権本戦(エキシビジョンではない!)で選んだ楽曲はなんと全世界に"スクラッチ"の概念を広めた歴史的B名曲ハービーハンコック「ROCK IT」。そこで観客を完全にロックしたプログラムの内容は・・・といった感じ。

かのアフリカバンバータ曰く「B-BOY、それはBADのBではなく、何かをBREAKするやつのことなんだ」とのこと。そう考えるとStephanie Rosenthalは完全にBでBREAKしている。もちろんBREAKDANCEのBREAKではなくて。まずこれを本戦でやったということがすばらしい。そして、本人が一番楽しんでいる。そのことによって周りに変化をもたらしている。作曲における「サンプリングの発見」くらいのドカンがここにはある。アイススケートでもブレイクダンスでも見たことのない動きとかあるしなあ。2分22秒から29秒のポージングとか好きだ。

この攻めの姿勢だけでも十分評価高いんだけど、ただ変わったことをやってみましただけじゃなくて、もてる技がたぶんかなり限られていて精度も期待できないだろう中で自分の一番輝く手段を確実にものにしたということも感動的。これはすごく励まされる。エキシビジョンでジーンズ履いて滑ってキャーおもしろいーなんてものとはまったく異なる種類のチャレンジで、チャレンジだけじゃなくて結果も伴っているという。

あと審査員の評価の低さが会場を盛りあげる要因にしかなってないのが一番すごくて、これも「いい点を取れば勝ち」という動かしようのない従来の概念を簡単にひっくり返してるよね。

アイススケートのピラミッドの頂点でなくても、ブレイクダンサーの頂点でなくても、これだけのものを生み出せるんだということがすばらしくありませんか。なにかの頂点にいなくてもなにかを生み出せるんだということがすばらしく素晴らしいと思うんですよね。

多分この人は金メダルはとれない感じの選手だと思うんですが、それを補うために自分の持っているものを最大限につかって、重ねて、明らかに「補う」を越え「生み出し」てしまっているわけですよ。それに対して、金メダルをとる演技を目的に会場へ足を運んだ人さえも引き込んでるんですよね。これこそヒップホップ。

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