ムサン日記〜白い犬

なんでこんなダサいタイトルなんだろう…??と悩んでしまうこの『ムサン日記』。中身は、地味ながらも、例の我々が愛してやまない「ビターサイド・オブ・韓国」をじっとりと味わえる傑作でした。(韓国内にも「この現実と向き合いたい」っていう現実主義者と、「辛い事忘れてとにかく楽しみたい!」っていう脳までポンチャックみたいな人の二種類がいるんでしょうね)

脱北者として、主に職業差別を一身に浴びながら、調子の良い脱北仲間と一緒に暮らしているおかっぱ頭の主人公(顔つきがECDに似てる)の身に吹く世間の冷たい風について、主人公同様の不器用なまでの実直さで描いております。宗教と人生の欺瞞についての距離感を描いている、と言えば、同じ韓国の「シークレット・サンシャイン」を思い出しますね。

その彼の心にちょっとだけ光が灯るのが、この写真にもある、タイトルにも冠されている「白い犬」のペック。俺、今まで見た映画の中に登場してくる犬の中で一番可愛い犬だと思うな(ちなみに私、すねを思いっきりかじられて以来、大の犬嫌いです)。実際に主人公役を演じた監督の飼い犬らしいので本当にどこか似ていて、世にもカメラにも背を向ける主人公の卑屈な精神性を体現しているかのような重要な役回りを演じています。

予告や惹句でも触れられている通り、この頑に守ったおかっぱ頭を遂に切るとき、そしてとにかくビターなエンディング、そっと添えられた字幕。何がハッピーで何がサッドだったのか、一言では言い表せない余韻に溢れた展開にグッと来ます。話がドライブしていく要の部分を画面上に描いたり描かなかったりするチョイスにも、センスを感じました。「最高に楽しい!」とは言えないけれども、観賞後に太ももの辺りを鈍器で殴られたような重い感情を味わいたい、そんな方にはオススメの映画です。


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