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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。大好きだけど、映画としての完成度を手放しで認めちゃうほどは狂えなかった前作(特にラスボス、手を繋いで「わーーーー」って言ってたら倒せちゃう系には点が辛くなる)。とは言え、続編で大好きなあいつら、スターロードことピーター・クイル、ガモーラ、ドラックス、ロケット、そして「I am groot」でおなじみグルートや、ヨンドゥに再び会える機会がやってきたと聞いて、会いたくないと言ったら嘘になる。ということで、TOHOシネマズ渋谷へ。

…終演後、拍手起きてたよ。俺も涙を拭きながら手叩いてた。最高最高、最っっっ高!!!!!

SFアクション・コメディの大傑作

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)15作目として公開された本作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2』(日本公開題では絶対に呼びたくない派に属しています、俺も)。まず、MCU作品の最大の欠点である「一見さんお断り」の敷居の高さは全く気にしないでOK。続編なのでさすがに一作目を観ておいたほうが上がるけど、最悪それすら観なくても鑑賞には特に問題なし。MCU前作『ドクター・ストレンジ』(これもド傑作)同様、各ヒーロー単体作では、一見さんに配慮することで、更にファン層拡大を狙ってるんでしょうね(で、アヴェンジャーズとかシビルウォーは、ファンサービス作品として割り切っちゃう)。全く恐ろしい組織ですね、マーベルシネマ…。

本作はSFとしての出来も相当良く、「イマジネーション溢れるSFアクション・コメディの大傑作」としても、十分オススメできる内容になっています。更に言うと、単に独善的で突拍子もない「発想」を振り回すだけの映画ではなく、過去のSFのビジュアル資産、歴史の上に成立しているのが本当によく分かる美術の数々が、それだけで鑑賞欲を満たしてくれます。特に気に入っているのは、金色の肌をしたソヴリン人が、大型の部屋に敷き詰められたゲーセンの巨大筐体のようなコンソールで、スペースシップを遠隔操作してガーディアンズ達を攻めるシーン。ここは『2001年宇宙の旅』を思わせる少し球状に歪んだレンズを用いたような視覚効果で、艦隊の大きさをヴィジュアルで印象づけるような良い場面。例えば、エゴというキャラクターの乗る白とピンクが配色された丸い宇宙船なんかは、『ホドロフスキーのDUNE』で、ギーガーやメビウスがぶち上げたようなとんでもないイマジネーションに通じるものを感じてゾクッと来たし、フリッツ・ラングやアレクセイ・ゲルマン『神様はつらい』のようなディストピアのイメージすら、ソブリン人の青絨毯での行進シーンなどで挟み込んでくる。それも爆笑込みで。そう、この映画、コメディなのよね

会場は(外国人が比較的多めだったとは言え)終始爆笑の連続で、特筆すべきは、緊迫感の高まるスリリングなシーンでも、哀しいシーンでも、問答無用でギャグをぶち込んでくるところ。予告編でも流れている起爆装置を前にした「I am Groot?」のシーンや、デヴィッド・ハッセルホフのあのシーンも、本編通して最大級に緊張の高まってくるところでのあれですからね。泣きと笑いとスリルのミルフィーユを問答無用で食わせる。そんなミルフィーユ大好物じゃないですか。そんな映画です。

前作で割と丁寧に出会いを描いたキャラクター達も、本作ではもう前置き不要だから、オープニングから飛ばしまくってる。冒頭の大戦闘シーンをバックに、前作で訳あって「小枝」と化してしまったベビー・グルートがスターロードの最強ミックスをバックにダンス。もうその時点で入場料にお釣りが発生しちゃってるわけ。チーム全体のベースに流れるチームワークの良さ、ファミリー感がこのシーンでガッツリ説明されちゃっている。

まさかの「ガハハ」キャラで、完全にチームに溶け込んじゃってるドラックスは、後半何やってても面白い状態に。キリッとした顔してても面白いって、コメディリリーフとして完璧な仕事じゃないですかね。ガモーラ萌え。ピーター・クイル、というかクリス・プラットの俳優としての格が上がってるのも嬉しい誤算だったし、もうとにかくかわいいベビー・グルートはもうとにかくかわいい。で驚くのは、かわいさもちいささも、全部物語に活かされている点。そう、この映画、至る所に伏線が貼ってあって、それを見事に回収していくのも気持ちいい。脚本最高。ここに来て俺、確信した。ジェームズ・ガン。天才だと思う

…で、そろそろ、いっすかね?以下、ネタバレ全開で挑みます(ネタバレがあっても大丈夫な映画はあるし、この作品はネタバレしていたとしても作品の価値が著しく落ちるようなタイプの映画ではないんですが、それでもまずは映画館に足を運んで欲しいですね。ビックリするのも価値の一部だから…)。

父と子の関係を描き、前作からの伏線を消化

さて、本作のテーマって何でしょう。ズバリ「親子(特に父と子)」ですよね。これは観た人誰もが分かると思う。

途中まで観た時点で、「この映画って最高だけど、あれ、ヴィラン(悪役)はどこに出てくるんだ…?」って不安に思ってたんです。幼いころに母を悪性の腫瘍で亡くし、父を探して宇宙を放浪していたピーター。その前に現れる父(カート・ラッセル)は、その親子でしか出来ない絆としての「光の玉」を使ってキャッチボールをしてくれる本当の父。そんな父親が、ヴィランとして彼らの前に立ちはだかる展開、そしてその事実を伝えるために周囲の仲間たちが集まってくる展開のタイトさ。

そうした中、中途より特にクローズアップされる、義理の父としてのヨンドゥの存在。彼が、この物語のテーマ性に、二重三重の意味をもたらしたと言っても過言ではない。「神の子」であったピーターが、その事実を喜びとして受け入れる事実。そして、ピーターが肌の色も違う誘拐犯であるヨンドゥに、終始脅され、強制的に悪事を覚えさせられていたという悲しい事実。その二つの事実が、ピーターに間違った判断をさせる足枷として働く。そんな力学が物語を推進させているわけです。

そこに、仲間たちの手によってもたらされた情報がピーターの判断を正しい方向に導くが、同時にそのタイミングでヨンドゥとピーターの本当の関係がズルズルズルっと白日のものになってくる。この瞬間に本当の白眉、カタルシスがあったと言えるのではないかと。「何故ヨンドゥはピーターに甘いのか(本当はどういう感情を持っているのか)」という前作からの伏線も含めて、ピーターとヨンドゥが本当の父子になるところで、この映画はクライマックスを迎え、僕らは鼻をすする、っていうか、もうこの瞬間の記憶が無いわ

そしてロケット。引き続き、彼は過剰な憎まれ口を叩く、どっちかと言うとボーダー振り切れてしまっているタイプの厄介な「友達」っていう印象のままこの映画に登場するんですが、その彼が初めて真摯な表情を見せる時、つまりヨンドゥの「父としての決断」を「似た者同士」として受け入れる時、彼のチームに対する感情、特にグルートに対する感情が露わになり、「We are groot」…。もう涙腺がバカになるわけです。この「CGで出来たアライグマ」っていう、映像表現におけるハンデキャップを背負ったキャラクターの「真摯な表情」を観るためだけにでも、映画館行く価値アリですよ。マジで。

…ということで

もう後半は殴り書きみたいになってしまいましたが、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2』(日本公開題だけじゃなくて、本作の日本における宣伝は、正直酷いと想いますよ。あのポスター観て、行きたいと思う一見さんが多いとは思えない…)。序盤に書いたこと思い出して欲しい。これMCUの新作っていうよりも、「SFアクション・コメディの大傑作」として捉えていいものだと思います、マジで。エンドロール始まってからのおみやげも異常に多いし、原作ファン垂涎ものの展開も大量にしかけてあるし(俺は元々原作ファンじゃないから映画観てる時点ではポカーンでしたが、後で調べて高まるものがあった)、勿論今回も最強Mixは最強だし、そもそも物語に深く影響を与える重要な要素になっています。退屈なシーンが一秒もなかったので、「SFアクション・コメディ」にピンと来た方には全力でオススメします!!

https://www.amazon.co.jp/dp/B00PFOH29I

一作目。俺は冒頭のシークエンスが一番好きだ。

https://www.amazon.co.jp/dp/B06Y5DN2FW/

サントラ。Apple Musicには存在せず、代わりに1作目と2作目合わせた公式プレイリストが存在してる。

https://www.amazon.co.jp/dp/4800312078/

今一番欲しい本。

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