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Return of the Obra Dinn

面白いゲームは沢山あれど、ここ数年で一番熱中したのは、この『Return of the Obra Dinn』だと思う瞬間最大風速。妻と二人、10数時間、むすこそっちのけで謎解きに転がりまわった結果、エンディングを経ても残る謎に、議論し続けること数日。ゲームをプレイしてて心底よかったと感じる、特別な時間を過ごした。

無人で帰港した「オブラディン号」の乗客は、何故全員失踪したのか。主人公は、遺体が経験した死の瞬間の記憶と、その前後数秒を追体験できる不思議な力を宿した懐中時計と手帳を武器に、その謎に立ち向かう。一見して特徴的な解像度の低いグラフィックは、その世界に入り込んでみるとひたすらに趣深く、このグラフィックに依存した謎も多いため、単なる意匠の問題ではなくゲームの構造に深く関わっている。グラフィカルな表現としての低解像度と、「死の瞬間を追体験する」という特殊な能力の限界としての情報劣化が見事にマッチしているが故に成立する謎を見るに、「2つのことを同時に解決することをアイディアと呼ぶ」宮本メソッドが見事に成立している。

https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000024506

乗客数十名の死因と、現在の居場所を特定するには、総当たり的なやり方では足りず、入念な観察と推理、そして根気が必要となってくる。特に物語の全体像が明らかになってからは、ゲーム性もサスペンスから論理パズルのようなものに変わっていく。記憶の断片から徐々に明らかになっていく謎、全貌が明らかになってもなお、どのように死んでのかわからぬ乗客の素性が、画面に残された僅かなヒントからずるずるずると明らかになっていく時の快感。全く同じシステムでいい。全く同じシステムでいいから、別の物語でもう一本作って欲しい。良質なパズルゲームに感じる「沼」がそこにあって、十数時間では物足りない、すっかりジャンキーと化した俺たちがいた。次を!早く!

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