フローズン・リバー

シネマライズにて、「フローズンリバー」を観てきた。

まるで映画の主役にはそぐわないような、皺だらけの中年女(しかし、その萎れた姿が、後半、重厚な趣を添える)が、振りかかる理不尽ではあるが、ある意味己の愚かさの反映でもあるような数々の不幸に翻弄され、法の及ばぬモホーク族の居住区で不法入国の手助けをする事で大金を手に入れる話。ここまでは、公にされているこの映画のあらすじ。

この「フローズンリバー」が各所で絶賛されているのにも関わらず、いまひとつどんな映画なのか、何が起こるのかが、ピンと来ていなかったが、それもそのはず。物語を語る事からは、この映画の核となるテーマを語る事は出来ないからである(勿論、それを子細に語る事はネタバレに直結するので、ここではそれを避ける)。

映画体験としては、至上のものだ。おおよそ無駄なシーン、無駄なカットは一つもないほど、全ての瞬間が映画のテーマに直結している。相当にストイックな作りだと思う(劇映画、かろうじて娯楽映画としての体裁を保っているにも関わらず、初期のソクーロフのような静謐さもある)。それが故に、この主人公が色々な喪失を抱えた「持たざるもの」である自分を乗り越え、そこで手に入れようとしたものとその引き換えに失ったものは、安易な飛躍、言い換えれば夢物語とは程遠い、実に現実的な冷めた語り口で静かに紹介されるのである。

見終わった後、「うーーーーん」と唸り、その映画として完璧な作りと、決して晴れないもやもやに対して、深いため息をつくのである。だから、あんまり万人向けの映画じゃないと思う。少なくとも、見終わって腑に落ちる、胸がすーっとする映画ではない。しかし、悪意の塊「ダンサーインザダーク」のような陰鬱さもない。しかし、この映画で語られたタイムラインの中で、彼女が経験した事を思うと、「良かったね」とか「最悪だったね」では語る事の出来ない、人生の奥深さを感じるのが、先に述べた「物語を語る事でテーマを説明出来ない」所以であるかと思う。観た人同士で話してみたいなあ。

加えて、音楽の使い方が最高である。

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