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ケン・リュウ『紙の動物園』

「テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭」と呼ばれるケン・リュウの短編集。中国に生まれ、アメリカに育つというその出自、プログラマーとしてマイクロソフトで働き、弁護士としての顔も持つという多才ぶりも納得の、突出した守備範囲の広さが反映された多彩なテーマを詰め込んだ15編の短編が収められている。

最初の二編(『紙の動物園』『もののあはれ』)を読んだだけで、大衆受けもしつつ、世界の掘り下げ方も決して甘くないその才能はひしひしと伝わってきたが、その印象のまま一冊読み終えた。SF作家必須の「特殊で興味深いシチュエーションを作り上げる」能力が竜巻のように荒れ狂い、シチュエーションの渦が脳味噌を刺激した。

包装紙で折った動物たちが動き出す魔法のような時間が崩壊していく表題作『紙の動物園』や、ヒューゴ賞受賞作『もののあはれ』は言うに及ばず、結び目を言語として使用する未開民族を自社の利益のために利用しようとする『結縄』、人工知能(?)を持つ新種の人類が大多数になった世界を新人類側から描いた『どこかまったく別の場所でトナカイの大群が』、宇宙開拓の旅に出た人々が未来の探検者たちに迎えられるという倒錯を描き、進化を通して話が創世まで飛躍する神話的な『波』、妖狐とそれを狩る少年の運命を描きながら、古い魔法が新しい魔法によって駆逐される世の理を書く傑作『良い狩りを』など。文体も読みやすく、如何にもSF的な設定の突飛さと、それを血肉化するための修辞や細部の描写のバランスも心地よかった。極端な難解さもないので、万人にオススメできるSF小説の傑作。

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