イラン社会における女優の立場と、芸術表現の自由を鋭く問う作品。革命後の抑圧的な社会システムの中で、女性アーティストたちが直面する苦難と、その生きる術を描く。世代を超えた女優たちの連帯と、社会の息苦しさを静かに、しかし力強く告発する。
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ジャファール・パナヒ『ある女優の不在』/過去・現在・未来が身を寄せ合った聖域
ジャファール・パナヒ監督作。女優としての未来を閉ざされている若い女性・マルズィエが送りつけてきた自殺動画をきっかけに、人気女優のベーナズ・ジャファリが向かった古く保守的な小さな村。そこで、イラン革命後に演じることを禁じられ、「芸人」と罵られて村八分になった伝説の元女優・シャールザードと出会い、過去・現在・未来の女優が一つ屋根の下に身を寄せ合うが、同行したジャファール・パナヒがそこに加わることは出来ない。三人が社会から身を隠すように一夜を過ごす、ささやかな明かりの灯った小さな家は半ば聖域のような佇まいで、おいそれと近寄ることは出来ないのと同時に、その存在はほぼ黙殺されている。「3つの顔」を意味する原題以上に、内容を適切に表現しているように思える邦題が見事。
クラクションを鳴らし合うことで細く曲がりくねった道を皆でシェアするためのルール。しかしルールは都合よく曲げられ、弱き者はその運用に右往左往させられる。そうした村のちっぽけなしきたり一つを、あらゆる角度で照射することで、この小さな地方社会の息苦しさを説明している。