ドイツの映画監督で、社会の影の部分を鋭く描く作家。初期作品ながら、人間の苦悩や閉塞感を繊細に描写する才能が光る。家族の暗部や若者の内面に潜む感情の機微を、抑圧された社会の中で生きる人々の視点から描き出す独特の映画スタイルで知られる。
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クリスティアン・ペツォールト『治安』/15歳の灰色の心
15歳のジャンヌの家族は、詳細不明の過去の罪から逃れるために、居場所を転々とするその日暮らしの生活を送っている。脛に傷持つ身が故、レストランで同世代の男子と喋るなど、少々目立つような行動を取っただけで「ちょ っとの辛抱が何故出来ない?」とかあまりにも残酷なことを言われ続ける。ガソリンスタンドで買ったダセえスウェット着せられ、恋愛どころかおしゃれも出来ない人生。じゃあ、両親は何故追われているのか?という問いに答えをくれる登場人物は皆無。自分はダメなのに、割と野放図に性交に勤しむ両親の感覚もどうかしていて、15歳の灰色の心には、ただただフラストレーションが積もっていく。
今や名匠Christian Petzoldとはいえ、初期作だけあって、あんまり上手くはない。あんまり上手くはないけど、めちゃくちゃ面白い。どう考えてもデッドエンドなのに、頑なに進行方向を変えようとしない両親の背後で感情を失っていくような終盤の展開には、特に引き込まれる。冒頭のジュークボックスで流れた時にはただのBGMでしかなかったTim Hardin「How Can We Hang On To A Dream」が、エンドクレジットで完璧な意味を持って流れる見事な映画だった。
What can I say, She’s walking away.
From what we’ve seen.
What can I do, still loving you.
It’s all a dream.