
グルーヴって、若い時に聴いていた音楽によって、身体の中に結ばれるのだな。10年ぶりに来日したPavementが1stアルバムの名曲「In The Mouth A Desert」を演奏し、身体を揺らしていた時に恍惚とそう思った。ダマのような音塊。墓を掘り起こすような寂寞と死んだ言葉に、リズムとメロディという魔法を授けるのだから、音楽とはかくも機能するものか。
思い起こせば、生演奏の洗礼は94年頃。札幌ペニーレーン24(すごい名前でしょ?ライブハウスです)の最前列、ガラガラ以上満員未満の観客の中、登場したPavementの5人。はっきり覚えてる。ベースのマークが「I am Pavement」とつぶやくと、注釈なしにボブとスティーブ・ウェストの二人がドンドコドコドコとドラムを叩き始め、死ぬほど聴いていた「She Believes」(『Westing』収録)の2トラック、平面的なイントロが、眼の前で立体的に響き出す。俺にとっての「ライブミュージック」はここから開始して、その29年後の今日もその「ドンドコドコドコ」は変わらず俺の身体を揺らすわけ。
もう3曲目「Gold Soundz」辺りで、比喩ではなくガチで泣きながら、保険をかけて失望する気満々で臨んだ自分を恥じたね。10年前の再結成や『Terror Twillight』の頃のような洗練を手放し、完成度は低いが、今ここでしか聴けない音を鳴らしていた。隣の若者が有名曲だけスマホで録画して、他は座り込んでインスタ観てたけど、愚かだと思ったね。ライブミュージックの魔法は、今ここでしかかからない(ライブ盤でも無理よ)。『Watery, Domestic』からは、「Frontwards」でも「Shoot the Singer」でもなく「Lions (Linden)」。「Box Elder」はやらなかったけど、「Angel Carver Blues / Mellow Jazz Docent」なんてライブで初めて聴いた(ライブ音源のリリースはあり)。「Fame Throwa」も初めてだったかもしれない。やっぱりドコドコ。
すっかり歳をとり、代名詞とも言うべきアクションも控えめになったSM含むメンバーたちが退場して、気がつけば寒さの中でずっと痛みが取れない腰にも背中にも限界がきていた。しかし、こうして、音楽があることで少しだけ良い人生を生きることが出来る、出来ている、ということが具体的に目の前で花開いている瞬間は尊い。100人入れば一杯になるような会場も埋められなかったPavementが、TOKYO DOME CITY HALLをいっぱいにして、今まで見たこともなかったような若い人たちを興奮させている。こんなに良い光景はない。作品が、人を惹きつけ続けている。戦略だ広報だという前に、作品に向き合うことの正義を感じつつ、丸めた背中を伸ばした。
Grounded
Perfume-V
Gold Soundz
Transport is Arranged
Kennel Distinct
Cut Your Hair
Heckler Splay
In The Mouth A Desert
Embassy Row
We Dance
Lions (Linden)
Painted Soldiers
Harness Your Hopes
Unfair
Shady Lane
Type Slowly
Spit on a Stranger
Fame Throwa
The Hexx
Here
Stereo
Fight This Generation
Range Life
アンコール
Grave Architecture
Summer Babe
Angel Carver Blues / Mellow Jazz Docent
Major Leagues
Stop Breathing