地獄変は、極限状況下での人間の精神と組織の崩壊を描く芸術的な表現。密林という閉鎖的な環境で、少年兵たちの心理的な変容と権力関係の脆さを描き、カルト的な狂騒と暴力の中で、人間性の脆弱さと生存本能を鋭く描写する。アレハンドロ・ランデス監督の作品は、『蝿の王』を想起させる、人間性の闇を凝視する衝撃的な作品世界を展開している。
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MONOS 猿と呼ばれし者たち

人里離れた高地、幽玄な景色をバックに、激しい訓練で消耗する少年兵たち。言語や風景から南米を思わせるものの、場所も目的もはっきりしない戦争の中で、人質の管理を任されることにな った彼らは、極度の緊張を強いられている。
アブストラクトなミカ・レヴィの音楽が見事に演出する、幼い精神の落ち着かなさ。謎の敵対勢力に囲まれ、ジャングルに孤立する幼い組織は、嘘と裏切り、弱さと虚勢に弄ばれるよう。死と背中合わせになった極度な緊張は、幼い乱痴気で解消されるが、それは次の緊張の種を蒔く。引き返すことの出来ないカルト的な狂騒の中で力関係がコロコロと代わり、それに寄り添うように物語の主人公も変わっていく。
誰が何から逃げているのか。主客が揺らぎ続ける逃避行は、圧倒的な密林の中で繰り広げられる。蚊に悩まされる密林の夜、土砂崩れに押し流される表現は圧巻。『蝿の王』のように、少しずつ崩壊していく少年少女の組織。アレハンドロ・ランデス監督は、『炎628』の地獄変をアップデートしてみせたと思う。
