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下宿先のおかみさんの横を通り抜けるだけのことでウダウダと考え込んてしまう冒頭から、難読の苦しさも覚えず20日程度で一気に読み終える。やはりラスト周辺は圧巻だった。質屋の婆を斧で惨殺した主人公ラスコーリニコフを追い込むのは、自意識だったり、良心だったり、高邁な精神が周回してしまうようなねじれた構図であったが、そのどれもがことごとく丁寧に潰されていく終盤。ポリフィーリィ判事の追求(ここはエンターテイメント性に溢れていて、まるで推理小説のよう)により論理も破綻し、高潔な自害ですら淫欲の男の行為により虚無とされる。彼の行為が、論理的にも、倫理的にも、詰んでしまう終末に向かう1000頁が「罪」。無私の女・ソフィアとラスコーリニコフの間に改めて確認される愛情が描かれる「罰」は、たった20頁。「罪」と「罰」の物語が、別の新しい物語へと語りを変えるまでの時間。

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