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バニシング - 消失

ちょっと目を離した隙に消えてしまった妻に執着し、その犯人を執拗に追い続ける主人公の目線。それ以上に、「犯人」の日常を丁寧に描いた、ノワールっぽさもある実録風の犯罪映画。1988年のオランダ映画だが、2019年にリバイバル上映されて、ようやく観ることが出来た。監督はジョルジュ・シュルイツァー。

「犯人」が、果たして本当に犯人なのか。妻はどこに消えてしまったのか。そういった「犯罪」をわかりやすく追うフィルムとは異なり、偏執的なまでに虚実入り交じった現実に捕らえられてしまった人間の生き様が描かれているという点で、すなわち通常の「犯罪映画」とはかけ離れた作りになっているのが面白く、スリリング。

犯罪の予行練習に余念のない犯人(微妙にピエール瀧っぽい風貌)。獲物をハントしに街へ出たところ、偶然知り合いに声をかけてしまい、その場を取り繕うも全く上手く行かず、「ナンパするならサービスエリアとか、少しは遠いところ行ったほうがいいと思いますよ」ってアドバイスされた時の冷たい目線。ほぼホラー。僕は共感性羞恥に震え上がったんだけど、そういう痛々しさが魅力の映画ではある。

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