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期待値ゼロ、早めに済ませておきたいという義務のような気持ちで赴いた公開初日。結論、全然良かった。完全支持。

勿論、どうにかして欲しいところはある。「才能」と「血清」を結びつける「Gift」の使い方など、いくつかの重要なモチーフが軽く流されちゃってた字幕の問題というのもある。血清前のマイロの書き込みが甘くて、彼のパーソナリティ表現が完全に俳優のパワープレイ頼みだったところとか、コウモリの使い方に腹落ちしたかったり。ただ、些末な部分であって、基本的な美点は揺るがない。ヒーロー映画の一話目で描くべきキャラクターは、しっかりと効果的に印象付けられていたと思う。

問題はもっと深いところにある。簡単に言うと「ヒーロー・ヴィランの枯渇問題」というか、「どこかで見たことあるヒーロー」の枠を超えてくるのが、単純に量的な問題から難しくなってきている。そういう意味では、この『モービウス』も呪われた子であるのだが、それはこの映画特有の問題ではない。それ以上に、少なくとも本編では「例のあの人が出てきました!」的な「ヒーローユニバース伏線びっくらかしインフレ」を(おそらく意図的に)避けた上での成功が、この映画の貴重な達成であった。海外の不評について、正確に中身を知っているわけではないが、もしもそこに端を発しているなら残念な状況だなと思う。

で、やはり、その全世界的な「ヒーロー不感症」に対する即効性のある最大の解決策は、俳優が持っている。そういう意味で、世界一バンパイア似のジャレット・レトはあまりに美しすぎたし、対するマット・スミスの怪演もフックが効いていて最高だった。ヒロイン、アドリア・アルホナ(初見。はじめまして)の魅力にも、本作への愛着を感じる要因の一部があったと思う。脚本も「ありきたりな物語」という評価は少し失礼だと思う。例えば吸血効果の持続時間とか、飢餓状態での生存実験といった、要所要所の掘り下げが興味の持続に一役買っていたり、おかげで二時間飽きずに楽しめた。

で、ポストクレジット。誰も怒る人はいないので、しれっとアメスパユニバース、再開してくれないかなーと思った。大好きなんだよ、アメスパ。アンドリュー・ガーフィールドに改めて詫び入れて再招集、カーネイジ無駄遣いの件も、なかったコトにして、しれっとさ。

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