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House of Seven Belles

『COUCHONS vol.2 - Andy Milligan』で特集されていた「トラッシュホラー界の異端児」アンディ・ミリガン監督作『House of Seven Belles』が、ニコラス・ウィンディング・レフンのbyNWRによって発掘され、MUBIで配信されていたので観た。みんな、「最後まで見通すのが困難」「モニターの前に座っているのが苦痛」とまで言うもんだからかなり身構えて観たけど、思ったより面白くなくなかった!!もうちょいじゃ〜ん、最後まで撮れよ、って思った。

https://mubi.com/films/house-of-seven-belles

南北戦争終戦後、ある富豪一家の土地を巡る陰謀と、謎の連続殺人事件を描いた群像劇。そう、群像劇なんすわ。群像劇ってテクニックが要ると思うんですけど、案の定、説明が乏しすぎて、誰が誰なんだかさっぱりわからん。誰かに、人物関係図を作って欲しいぐらい。残された7人姉妹(もう、7人いたかも曖昧…)は、陰謀に抗おうとするのだが、それぞれに謎の思惑があるのと、みんな凄い勢いで喋り続けるから最終的には誰かが喧嘩して終わる家族会議。

コスチュームプレイなので、絵面は安定して見えるはずなんだけど、アンディ・ミリガンの映像的な特徴と言われている本当に笑ってしまうほど終始傾いてるアングル(多分、面倒くさいんだと思う)や、忙しない切り返しで全く落ち着かない。編集も性急すぎて、唐突に馬の映像が何度も挟み込まれるんだが、妙な勢い。エロ描写はほぼ皆無で、チープなスプラッタ描写は方向性がよくわからないけど、潰れたビーチボールのような足の切り株から、コンデンスミルクのような膿が出るシーンとか、これはこれで謎の趣がある。ところで、村の女達の集まりの途中で突然首がすっ飛んでくるシーン、あれは一体なんなの???登場人物の演技もとんでもない三文芝居。衣装代の請求に来たデザイナーが、娘たちとドタバタの寸劇を繰り広げるシーンとか、心から何がやりたいのか全くわからなくて頭が痛くなるぐらい呆れた。イコライザーが破裂するんじゃないかと思うぐらいハイが振り切った笑い声が、部屋の壁を揺らす…。

何のために作ってる映画なのか全くわからない、挙句の果てに完成すらしない…。とにかく、全然褒めるところのない映画のはずなのについつい引き込まれてしまうのは、大いに空回りしてはいるものの、異様なほどの切迫感と映画製作への情熱がモニターが壊れるほどの勢いでほとばしっているせいなのかな、とも思う。結局、俺は、何の話かわからないまま、矢継ぎ早に見せられるメロドラマに目が離せなかった(英語力不足もあり、高速の喋りについていけないのもある)。『COUCHONS』でも言及されていたが、アンディ・ミリガンにもっと良い出会い、良いチャンスがあれば、全く違う評価になってたのかもしれないな、と少し感じるところはあって切なくはなったが、他のを観てみないとわからんな。

なので、『Vapors』『Nightbirds』『Ghastly Ones』辺り、なんとかならないかな、と天を仰ぐ現状でした。(そこにDOMMUNEでの緊急特集はまさに僥倖。正座して観ます)

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