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ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて

「ベストドラクエは?」と聞かれたら、どうしてます?

Nintendo Switchで11Sをプレイするまでの私は、「やっぱ3かな。でも、8も同レベルでよく出来てる。4も棄て難いが、AIがしょうもないから…」みたいに歯切れの悪い回答に終始してた。でも、今は、No Doubt。11一択である。

「よく出来ている」というのが大前提。若干古臭さは感じるものの、過去のドラクエっぽさをしっかり残しながら、程々に便利なインターフェイス。背景はより綺麗に、キャラクターは程よくデフォルメを施すグラフィックの勘所。そして、今作の良いところはなんと言ってもゲームバランス。最後の最後まで、歯ごたえのある戦闘が楽しめるし、しっかりとレベル上げすれば敵を圧倒できる。やるべきことが多すぎて、世界をウロウロと探索するうちに全メンバーがレベル99に達したが、それでもラスボスでは数人瞬殺され、途中心が折れるかと思った。この「絶対かなわないと思った超強敵を、メンバーの成長のおかげでなんとか撃破できた」というバランスを最後まで維持し続けたのは、このゲームを継続して楽しみ続けられたポイントの一つだと思う。

しかし、それ以上に、今回の物語はすごい(以下ネタバレ)

今までのドラクエの「大いなるマンネリズム」は堂々としたものだった。ラスボスはいつも進化するし、恐ろしい災いはいつも降りかかり、それでも勇者たちはなんとなく助かる。例えばドラクエ7の石版クエストで起こる数々の陰鬱な結末や、あの悪夢のアッテムトのように、信じられないぐらい悲惨な出来事が起こるような時も、ヒロイック・ファンタジーである行きがかり上、一応悲しかったり憤りを覚えたりするのだが、でもどこか他人事の安心感に護られていたことは否めない。だから、我々も慣れちゃって、ドラクエに心の安寧を揺るがされるなんて想像すらしていなかったわけ。ところが、今回は、いつものドラクエ流ご都合主義的の裏にある犠牲、のようなものを露呈させて、我々が当事者であることを突きつけてくるのだ。ベロニカの件である。それが「本気である」という信じがたい事実を前に、2日ぐらい考え込んでしまった。

自分たちの力不足が故に、世界に決定的な破局がもたらされる。その後、散り散りになった勇者たちは、それぞれの物語を繋いでいくことになる。ありがちなカタストロフィーに、そのマッシブなディストピアぶり。堀井雄二流ヤダ味をしっかりと味わいながらも、「ご都合主義」を甘んじて受け入れる甘口な俺たち。しかし、違ったわ。今回は、この生存の裏にしっかりとした犠牲があった。双子の妹であるセーニャが髪を切り(Point of No Return…)、「今回はどうやらマジらしい…」という気配に直面した時、かの「JRPG界のボンカレー」ドラクエのキャラクターに対して、肉付きのしっかりした「哀しさ」を覚えたことに動揺したのだ。

その境地に至るまでの積み上げ方も大変巧妙だった。類型としての「ツンデレ」を援用しながら、しかし生真面目さと率直さ、若干カルト臭すら感じるほどの任務に対する実直な服従心を秘めたベロニカは、その圧倒的な火力も相まって、一周どころか二〜三周回って大変好ましいキャラクターに見えた(少なくとも私にとっては)。その双子の片割れであるセーニャの、回復担当というキャラクターにふさわしい曇りなき母性を見せつけながらも、どこかフワフワとした、意志を持たない人間のように見えてしまうという点が、作劇上の欠点にすら見えていた。能動的な主砲を、しかしその能動性が故に欠いてしまった時、彼女の欠落が、受動的で不完全なキャラクターであったセーニャの変革を促す。そのセーニャが、虚無スレスレのラインで悲しみを乗り越え、爆発な成長を遂げることで目的を果たし、そして最後に家族・親戚の囲む故郷にてようやく涙の一粒を落とす時、プレイヤーである私も既にこのキャラクターに深く感情移入していたことを意識したのだった。

こうしたシチュエーション、そしてキャラクターの「重み」をしっかり辛口に描き切ることで、過去のドラクエすべての物語の源流としての「重み」を示すこと。それこそが、「原点回帰」と謳われたドラクエ11で成し遂げたかったこと、もしくは図らずも成し遂げてしまったことなのではなかったか。例えば、「ぱふぱふ」とか「ムフフ本」といった、「ドラクエ的と言われればそうだが、単に時代錯誤のスベったギャグ」や、シルビアに代表されるLGBT(少なくともシルビアに自らを女性という自覚はある)の描き方に見られる「時代についていけてない感」を見るに、ドラクエとしてこの描き方を改めるつもりもなさそうに思える。というか、この一本で、ドラクエを閉じようとしている、そんな気迫すら感じた。ビジネスとして、ドラクエブランドは簡単には潰せないだろう。実際潰す選択はしないだろうと思う。しかし、ここに終着への志を見てしまうことを止められずにいた。(…とか書いていたら、12の発表もありましたね

ラストの考察についても、俺は、割と中盤(一回目のボス撃破直前、神の民が姿を表す辺り)で、この物語がロト三部作と天空シリーズを接続する要石として作られたのではないかと妄想していた(噂は尽きぬものの、天空の方は若干無理があるのかもしれない)。それを、どのようにして成すかは正直見当もつかなかったし、結果的にそれをやってのけた見事な手管には圧倒された。整合性については、まあここは、堀井雄二ならではの「ケレン味」ってことで、なんとなくフワッと楽しもうや、とオススメしている。大満足でした。堀井さんはまだ続ける決断をしたが、私のドラクエはここで終わっても良い。そう思えた一本だった。

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