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怪談

ジャパニーズ・フォーク・ホラー作品として名高い小林正樹『怪談(Kwaidan)』。抽象度を高めて魔術的なムードを醸し出す書き割りなどのとんでもなく完成度の高い美術(『愛のコリーダ』や『戦メリ』を手掛けた戸田重昌)や、武満徹の雅楽を援用した劇伴をより引き立てる静寂、など、無思考で浴びるのにも適しているが、何より全編通してしっかりとおぞましい。フォークホラー文脈で言うと、『妖婆 死棺の呪い』に近い感触かもしれないが、こちらの方がより重厚感がある。3時間もあるが、オムニバスなので分割してみるのもオススメ。

黒髪

美しい新珠三千代の元を離れる三国連太郎に、「マジか」とつぶやくが、没落武士の貧乏描写が腰座ってるので、まあ、やむなしなのか…と納得させられてしまう。任地の生活に耐えかねて帰った屋敷の更なる荒れ果てぶりに今後の展開が読めてしまっても、しっかりと嫌な気持ちにさせてくれる黒髪と髑髏のおぞましさよ。

雪女

岸恵子の雪女は少々いなたい感じが否めないのだが、その後「おゆき」として再登場するに至り、弾けるような美しさを見せる。冒頭の雪の描写や凍った息を吹きかける仕草など、所謂「昔話を映像化する」という意味では、完成度が異様に高いなと感心した。

耳無芳一の話

西洋から見ると、この世界観が一番エスノかつペイガニズムを感じさせるのではないだろうか、と思うサイケデリックな傑作。ホドロフスキー『ホーリー・マウンテン』を想起した。宮廷の美術が白眉で、淀んだ水に浮かぶ舞台の絵面で白米何杯かいけそう。

茶碗の中

「茶碗を覗くと他人が見つめている」という厭なシチュエーションをしっかりと映像化するだけではなく、原作が未完なのを活かしてメタフィクション化してしまったところにオリジナルな発想がある。という意味で、ラストの貞子的展開には興奮した。『耳なし芳一』同様、悪霊に魅入られた人間の破滅を描いてると思いきや、シンプルに狂ってる可能性も捨てきれず、良い味わいの作品だった。

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