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見事に映画だった。映画。

主人公ヨンホは、漢方(韓方)の医師である父親に会いに来る。父親に会う肝心なところは映らず、事務員のおばさんと抱擁を交わし、「愛している」と語る。その彼が、自身の俳優としての挫折を「うそで抱擁は出来ない」と告白し、師匠と噛み合わない激論を交わす。ところで、当の師匠が「顔がいいから、俳優を目指してみたら?」とそそのかしたり、ドイツに留学した彼女が彼と分かれ、現地の男性と結婚するような重要な場面も映画からささやかに排除されている。

3部構成の作品で、78分。もう15分余分にあったら全部語れるぐらいの規模感なのに、何も語らず、画面は寄せては返す波をただ映し出す。雪降る中、タバコを吸う。ファッション志望の女の子に、聞きかじりの「厳しさ」を伝える。豪快に路駐する。師匠は大声で筋の通らないことをまくし立て、皆が酔っ払っている。そこに突然妄想が介入し、母親が遠くのベランダで佇んでいる。

もう、圧倒的に「映画」。ホン・サンスは「映画」を撮っている。

MCATM

@mcatm

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