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NOVEL 11, BOOK 18

「この世で最も素晴らしい幸福とは短い幸福である」。主人公ビョーン・ハンセンの「客観」はそう宣言して、その「短い幸福」の行き先を見届けることになる。ノルウェーの作家ソールスターによって書かれた11番目の小説、18番目の書籍。研究施設みたいに無機質なラベリング。ビョーン・ハンセンは、愛人ツーリー・ラッメルスと人生を歩むため、妻と子を棄ててノルウェーの田舎街に暮らすこととなるが、その第一歩目から終焉の兆しが顔を覗かせる。14年経って、一人になった彼の元に訪れる息子との関係においても、彼は理詰めで世界を客観視し、自ら絶望の種を蒔き、挙げ句その芽を摘むことに全力を傾ける。

愛人との関係における「芸術」、息子との関係における「未来」。自らもその意識の「駒」であるかのように振る舞う彼は、Point of No Returnにおいても同様に感情の見えない決断を下す。破局の予感すら見えない無限の地獄、つまり「永遠の不幸」の入り口に足を踏み入れた時、「おれ」が顔を出し、初めて物語が主観を得た。傑作。現代のカフカみたいな印象を受けた。

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