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主人公カータが、40歳を過ぎて子どもが欲しいと願い、養子を取る(Adoption)までの心の変遷。そこには近所の寄宿学校に通うアンナの存在が大きく寄与している。親から見捨てられた彼女は、恋人との束の間の逢瀬のために、部屋を貸してくれとカータに乞う。拒絶、受容、嫉妬、諦念。恋人が去る朝、言葉にはならない感情がカータの心を揺らし続ける。その空気の中、ケラケラと笑うアンナの頬を殴打するカータ。かたや、カータの恋人には妻と二人の子どもがいて、子どもが欲しいという願いは、必至の形相で打ち消される状況。

カータの目の前に、いくつもの「親子」の形が立ち現れては消えていく。「親子」の一つの形として捉えていたアンナとの関係は、印象的なカフェのシーンで「女同士の友情と結束」に結実したことに気がつく。不誠実な恋人に自分の家族を紹介されるという不可解な状況を経験して、その妻の吐露から己の恋人との未来にも限界を感じていく。

女性監督初の銀熊賞受賞作と知って驚いた。1975年のマールタ・メーサーロシュ監督作品。マールタ・メーサーロシュ監督の他作品にも見られる、無根拠の優位に浮かれた男社会と、徹底的に不満を抱えた女性たちという対立構図は、結婚式のシーンにも顕になっている。無言で交わされる怒れる女達のコミュニケーションに見守られ、式は決定的な不穏と共に幕を下ろす。女性による反逆の映画として見た。

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