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キル・リスト

フォークホラー文脈でかなりの頻度で評判を目にする作品なのに配信すらされていないのだが、DVD購入して観た。

仕事するのが厭になって8ヶ月もぶらぶらしてた元軍人の主人公が、相棒に促されて殺しの仕事を再開する…というシノプシスからは全く予期せぬ事態に発展していくので、「フォークホラー」の「フォ」の字も一旦忘れて欲しい。久しぶりの再開にさっきまで子供のように大はしゃぎしていた主人公が、ようやく帰宅する相棒たちカップルの車を見送りながら「やっと終わったか」と若干憎々しげにつぶやいたりするのにも、初めて合った相棒の恋人が、一人になったタイミングで突然鏡の裏に謎の文様を描いたりするのにも、主人公たちに殺される人物の不可解な言動にも、何の説明もなく、ただただ空気は淀んでいくばかり。そうした時折挟み込まれる妙な展開と、ジャンプカットと暗転を多用した編集が、夫婦の不和、コミュニケーション不全、血なまぐさい行為といったドラマをおかしな変拍子で解体していく異様さがたまらない。

腹にドスンと来る衝撃のラストを受け止めきれないまま、全編を漂う嫌な淀みにモヤモヤが拭えないので再度見返してみると、冒頭から伏線と仄めかしの嵐。序盤のディナーシーンの時点でほぼ物語全体が語られていることに気づいてゾッとした(そういう意味では『ミッドサマー』のタペストリーに近いものがある)。主人公たちが何をして遊んでいたのか、フィオナの職業、宗教に対する距離の取り方など、諸々に注目して再度見直して欲しい。ことごとくよく出来ているし、その反面、その才能や労力を風呂敷をキレイにたたむことに費やすつもりが全くない潔さに感服した。後に『ハイライズ』ではそのモヤモヤ醸成力を、『フリー・ファイヤー』では複雑な物語を構築する力をそれぞれ発揮したベン・ウィートリー監督。またこの手の「よく出来てるのによくわからん」快作に手を付けて欲しいと思った。

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