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暴力的で執着の強い元夫ベンから逃れるため、イェラ(ニーナ・ホス)は東ドイツから西ドイツのハノーバーに職を求める。出発の朝、半ば脅迫めいた形で「駅まで送る」というベンの背後に号砲のような爆音が聞こえ、追い立てられるように彼女が渋々車に乗ると、経済的にも追い込まれていたベンはそのまま車ごと川に飛び込む。

一命を取り留めたイェラはベンを置いて川から這い上がると、なんとか乗り込んだ電車の中で着替えようとするも換えがなく、赤い服のまま降り立つハノーバー。途方に暮れてホテルに着くと、払われていたはずの宿泊費が支払われていないという始末。挙げ句、自分を雇った男の会社は封鎖されており、邪な誘いに憤怒して断ると、晴れて職も金も服もない状態に。

しかし、捨てる神あれば拾う神あり。レストランで出会ったフィリップという男が、彼女をアシスタントに採用する。彼女の会計士としての才能は、初回のミーティングで明らかになる。割れるグラスと溢れた水。耳鳴り。彼女は、帳簿から取引の矛盾を指摘し、交渉を有利に進める。

水に関係するものが現れると、草木はざわめき、不吉な鳥の鳴き声と共に、彼女がいなかったかのような世界が繰り広げられる。クリスティアン・ペツォールト監督による、傑作『Carnival of Souls』の現代的な翻案。

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