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Yegor Letov

『インフル病みのペトロフ家』があまりに良い、特に音楽が、というか、この映画自体がほぼ音楽である…という思いから、サウンドトラックを漁っていて出くわしたイゴール・レトフ。『LETO』におけるKinoも、日本ではあまり知られていないポスト・パンクバンドを知るきっかけになったが、『インフル病み〜』の場合はこの人。

元々、Grazhdanskaya Oboronaというバンドの中心人物であったイゴール・レトフは、1980年代に活動を開始して以降、要注意人物として政府から追われ、1985年には精神病院に入れられてしまう。初期は割とシンプルなガレージ・パンクのような作風だったGrObも、入院時より書き溜めていた作品を、出所と同時に精力的にリリースを開始。今でも配信等で聴ける膨大な量の作品を残し、サイケパンクのような独特の音楽性を確立した。その間も精神病院に再入所させようとする政府の目を避けて、居場所も落ち着かず放浪生活を繰り広げていたという。

『インフル病み〜』でも使用されている楽曲は、GrOb活動停止後、90年代に活動していた「Egor i Opizdenevshie」のもので、ハードコアとロシアン歌謡が混ざったような独特の重くいなたい歌唱法ながら、バックトラックがまるでAriel Pinkのような軽さで面白い。彼自身は2008年に43歳の若さにして心臓発作で亡くなってしまうが、今でもこうしてきちんと掘り起こされるのはありがたいな、と思うよ。

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