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Baghead

4人の男女が主人公のコメディとして、オフビートな物語の幕は開く。元恋人同士なのだが今も付かず離れずの関係を続けているマットとキャサリン。ファニーフェイスのチャドは、人前でも大きなゲップをしてしまうようなイノセントでキュートなミッシェル(グレタ・ガーウィグ)に恋をしている。そんな彼らがある夜出かけた映画祭で、しょうもないアート映画ばかり撮っている旧友の思わぬ成功に発奮し、即席で映画製作のための山ごもりを発案。その場のノリで、そのまま人里離れたロッジに出かける。

到着してビールを開けるやいなや、皆口々に「疲れた」だの「眠い」だの言って、やる気が持続しているのはマットだけ。チャドはドサクサに紛れてミッシェルに愛の告白をするが、「兄のようにしか思えない」とすげなく断られる。そんな中、夜のロッジにズタ袋をかぶった不気味な怪人(Baghead)が現れる。それが誰かによるジョークなのかしばらく見分けがつかず、なんとなく「誰かの悪質なジョーク」ということで処理するも、いよいよ4人の中に誰も該当者がおらず、「あれは誰だ…?」と不安が絶頂に達した時、遂にその怪人物が懐からナイフを取り出すのだ…。

ロッジでの4人は、各々の思惑を交錯させて、心理合戦は泥沼の様相を呈している。チャドの恋も、ミッシェルの無邪気な思いも、キャサリンの気まぐれも、見事に空回りして事態を硬直化させ、マットの映画製作への意欲は蹂躙し続けられる。結局、悲劇が起こると同時に、ある事実が判明した時、ある者は憤り、ある者は懺悔し、ある者は優しさを覚える(「Take care you」と言い合っていたのを思い出す)。でも俺には、やっぱり蔑ろにされた魂を、誰か救ってあげて欲しいと感じたのだった。

日本語で観れないの悲しすぎる、デュプラス兄弟による2008年作。内輪のノリで映画製作しちゃうところとか、ちょっとマンブルコア周りの映画制作現場を皮肉る意図もあったのかなと思う。「クソみてえなアイスクリームはいらん。ハーゲンダッツのみ」という超格好良いボンクラ台詞(文脈は各々確かめてね)に続いて、「Good Night, Movie Girlfriend」で終わる映画なんて、美しすぎるだろうと思った。

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