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マリグナント 狂暴な悪夢

肉塊だったんだよな、俺達。

巻き戻しボタンを押したかのような雑さで、ケレン味たっぷりに無理矢理物語をたたみにかかる頃には、俺たちもうすっかり呆けていて喝采をあげる。肉塊だもの、俺たち。指の先まで神経が張り巡らされ、複雑な脳髄を持ちながら、やっぱり臓器の入れ物なんだ私達は、とあらぬところまで原点回帰させる快作である、ジェームズ・ワン監督作品『マリグナント 狂暴な悪夢』。

わーやだなーやだなー、この暗いところやだなー、空回りするミキサーやだなー、誰も居ないじゃ~んやだなー、一拍置くタイプのびっくらかしでしょこれ、やなんだよなー、一拍置くやつ。俺、実はホラー映画観るの苦手なのかもしれない、やだしなー、一拍置くタイプのやつ、とか思いながら映画館の座席で小さくなっていると、少しずつ物語のテンションがおかしくなってくる。「なにこれ?まあ、でも、わかる。わかるよ」とかやってるうちに、●●の●●から、突然●●が落ちてきて、明らかに様子がおかしい。なんだこりゃ、わーとか思ってたら、映画全体のテンションが劇的に上がっていて、その流れに飲まれちゃった俺は、怖いとかそういうことではなくて、なんだこれは?にドリブンされた感情が止まらない。今も止まってない。

シンプルにカメラワークが面白かったり、妹役のマディー・ハッソンがとても良かったり、そこかしこに『ヘレディタリー』オマージュを感じさせたり(気のせいかね)、と色々書きたいことはあるんだけど、ネタバレなしだと書けることが少ない。というのも、物語が上下左右と急展開しながら進んでいくというだけではなく、ジャンル自体とらえどころのないものに変容してたりするからである。少なくともスラッシャームービーではあるので、グロ暴力耐性があまりにも低い人は注意。そこさえクリアすれば、大丈夫、極上っす。パスカル・ロジェ『トールマン』とか、ジョエル・エドガートン『ザ・ギフト』とか好きな人には、あれぐらい脳、揺らしてくれるからオススメだよ。

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