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映画館の大スクリーンの前に陣取り、ほぼ視界の全面をIMAXのスクリーンが占領している状況で、砂嵐、大雨、これほどまでに視界は遮られるのか。それでいて、本当に視界に入れなければいけないものは、あまりに小さく、儚い。これを「圧倒的な体験」と言い換えられる、容易い世の中に生きている。

ドゥニ・ヴィルヌーヴによる、あの『デューン』の再映画化。『デューン』というか、別名・呪い。あの『ホーリー・マウンテン』のホドロフスキー御大が(基本自業自得で)挫折し、あの『エレファントマン』のリンチ御大が(基本他業他得で)無残な結果を残した、あの「呪い」を、いよいよSF大作作家として揺るぎない地位を確立したヴィルヌーヴが実写化したのである。ヴィルヌーヴは、駄作を作らない。撮ったのを観たことがない。だから、今回も素晴らしいはず。俺はその賭けに勝った。

映像美に加えて、キャストの力も、この物語の重厚さに十分な貢献を果たしている。主人公のティモシー・シャラメ、オスカー・アイザックやステラン・スカルスガルドは勿論、特に母親役のレベッカ・ファーガソンの表現力には目を見張った。シャルロット・ランブリング演じるベネ・ゲセリットの教母がポールをいたぶりにやってきた時の声なき怯え、建物全体が震えているような強烈な怯えは、ポールの過酷な運命に没入する土台として十分に機能していたと思った。あと、俺達のゼンデイヤ。正直、不安だったんだけど、飛び抜けてエキゾティックな美女モードで、感服。

脚本については、二部作の一話目なのだから多くは言うまい。というか、十分に面白い。地に足のついた物語運びは、もう名人芸と言っても良いと思う。不安視されていた次作の製作も決定したので一安心。後編が公開されるまで、みんな生き延びような。

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