ゼム

ある悲劇の記憶から逃げるように、心機一転コンプトンに引っ越してくる娘二人の黒人一家。彼女らが直ちに直面する、近隣住人からの差別、職場での差別、学校での差別、とあらゆる角度からの差別と闘ううちに、その家族は、土地とそしてそこに住む人々にまつわる恐ろしい怪異に気づいていくことになる。

ジョーダン・ピール諸作品や、『ラヴクラフト・カントリー』とは異なる「何か」を見いだせないまま、ただやはり「ヤダ味」の強烈さに惹かれて観続けていたPrime Video『ゼム』シーズン1。邪悪に邪悪を重ね塗りしたような終盤の展開には、じとっと手汗かきながら、マジで殺されるかと思った。

黒人家族の移住に、露骨に顔を歪める人々。主人公たちを取り囲む差別描写に、白人を無条件でモンスターとして描いているような歪なエクストリームさを感じ、そうした過剰さが新たな分断を生むのではないかという危惧がある。ただ、この作品について徐々にわかってくるのは、そうした過剰さが、あらゆる人間に対して容赦ないという現実。隣人の妬みに潰される人間、資本主義のロジックに尊厳を損なわれる人間、歪んだ愛情に囚われてしまう人間。力の不均衡がもたらされた場所に、邪悪が、邪悪の象徴が忍び寄ってくるというのが、この作品に通底する世界観なのではないかと怖気を奮った。

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