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エマ、愛の罠

養子の息子が奪われる、という謎の状況から物語はスタートし、「若い母親であるエマがこの子を取り戻そうとする」、という辛うじての骨子は伝わっては来るものの、特に主人公の気持ちが全く伝わってこない作りは、「信頼できない語り手」の存在を想起させる。叔母に火を付け、猫を冷凍庫で凍らせる息子に感じているのは、「愛情」なのか、「贖罪」なのか、それとも別の何か?

彼女は「復讐」を企てる。その当面の相手であるはずの夫(スノビッシュで嫌なやつだが、一概に断罪はできないラインの人物)とも、突然よりを戻したり、仲良く連れ添って歩いたり。一方、性生活はあけすけで、弁護士の女性や、消防士の男性と関係を持つ。その全てが、なんとも気まずい結末にしっかりと結びついている。噛み合わない歯車を強引に動かした結果生まれた、ひずみのような人生。

強烈な映像美と、音楽がニコラス・ジャーなのもポイントな、パブロ・ラライン2020年公開作。しっかりと構築されたドラマ。語り口の芳醇さが魅力の映画だった。映画館で観たかった!

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